ダブルアーツ

□拍手連載
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彼は女の子、時には女性をとっかえひっかえ、その傍らに寄らせていた。別にそれが嫌とかそういう問題じゃなくて、少し悲しくなった。世の中にこういう人材がはびこってたら、どうなることやら。破廉恥。それはさておき、彼は休み時間にたくさんの女の子に囲まれ、終わる時には全員の唇にキスをしてその子たちをそれぞれのクラスへと送り出す。正直恥ずかしくないのか、とも思ったけれど、どうしようもない。私は彼の隣の席のクラスメート、ただそれだけで、話したことも、目を合わせたことすら、無いのだから。もうそれが彼の普通だと、私の中では割り切ってしまっていた。


だから。今回のことは驚いた。


「なー、エルレイン。」

「は、い?」

「教科書見して」


忘れちゃった、と言いながら机を近付けてくる彼。
何に驚いたかと言うとそんなことで私に言ってくることだ。彼は忘れ物したら即座に教室を出て行く。多分どこかしらでサボるためだろう。教科書を忘れたぐらいで私に話しかけるなんて、っていうか私の名前知ってたんだ…と。


「良いですよ。」

「んんん?何で敬語?」

「癖なんです。気にしないでください。」


意外と普通に、いや少しまくし立てるようになってしまった気もするが話せる。少し緊張しているのは確かだけど癖なのも確かだし、と思っているときょとんとした顔で彼がこっちをみていた。


「……?」

「ぷっ、あはっ、あははははは!アンタって面白いなぁ!」

「…え。」


敬語が癖なのがそんなに面白いのだろうか。
でも私は、その初めて見る屈託のない笑顔に心を激しく揺さぶられた。


それがきっかけ。




(彼の名前はキリ・ルチル)(遊び人なのに、素敵な笑顔を持った人です。)





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遊び人キリと純情エルーの物語です。



(少し拍手と内容を変更しました。)
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