ダブルアーツ
□拍手連載
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「ねぇ、キリってばぁ、最近付き合い悪くな〜い?」
「あー、あたしも思ったぁ。ねぇねぇ、どうしちゃったのよぉ。」
「…ごめん、なに。聞いてなかった。もっかい言って。」
はー!?ありえないんだけど!!
そう怒った取り巻きの彼女らはさっさと教室から出て行った。大きく溜め息を吐くしかない。前はこんなこと、無かったのに、と。
「(で、こちらのお嬢さんは、と。)」
チラリと横に目線をズラすと、自身がこんなに抜けてしまった原因となっている彼女が、読んでいる本に釘付けとなっていた。
ちょっとだけ盗み見れば、細かい文字の羅列に頭が痛くなる。よくそんな本が読めるな、そう言いたかったが、集中している彼女の目を見ると、自然と発言は飲み込まれてしまった。
「(うわぁ……)」
なんなのこの気分。
自分の口元をふと手のひらで覆う。顔に集まる熱。自分が好きな女子を見るだけで頬を赤らめるような人間だとは思っていなかったからこそ、はて、こういう時はどうしたら良いのだろうか。
「(………触りたい、)」
ふとそんな邪念を。
見るからに男に免疫の無さそうな彼女にそんな感情を抱く自分。案外自分は鬼畜なんじゃないかとフラグ立て。
本気の恋かと言われれば、まぁそうなんじゃないかと思う。
細かく言えば本気じゃない時は今までに何度もあったし、本気だったことも何度もあった。しかしそんなものと比べものにならないほど、焦がれる想い。
「(慣れてないんだから勘弁してくれ…)」
「キリくん?」
「どぅへ?!………な、なに?」
急な呼び掛けに思わず奇声をあげ、挙げ句の果てには椅子から転げ落ちそうにまでなった。は、はずかしい。
その思いが通じてか、エルレインはぽかんとした表情をした後、堪えるように笑い始めた。
「あははっ、あ…っご、ごめんなさい…っぷぷ…」
「わ、笑うなよ!」
「だ、だって…っキリくんのか…おが…あははっ…」
「ー…」
「ぷぷっ…」
「(くそっ……かわいいんだよっ!)」
そっぽを向いても尚、はにかんだ笑顔とくすくすという声を背にして、またもや熱を取り戻した顔を再び抑えた。
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