ダブルアーツ

□寝息
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多少の恥はあっても越えられない壁というものがある。それは時に下品だったり破廉恥だったり、はたまたしょうもない些細なことだったり。片時も離れられず、常に一緒に居るということはそういうことだった。
正直言って自分は年頃の若い男なのだから、正当化する為にはしょうがないとしか言いようが無いわけだが、このミラクルな展開に驚きを隠せずにいた。


「(いいいいいっ…ななななっ、なんで…っ)」


何故こんなことになっているのかは分からない。
少し肌寒くなってきたこの頃、布団から露出した彼女の体が冷えては大変だ、と布団を掛けようとした時に、腕を引き寄せ(という名の足技)られていざその領域へ。
腕にあたる柔らかな感触だとか、耳元にくすぐったい穏やかな寝息だとか、とにかく顔の熱は嘘をつけなかった。


「(あ゛ーもう…なんでこんなことに…)」


額に手をやり唸るがガッシリと抱きつかれるように掴まれた腕は振り払うことなんて出来やしない。良くない考えを飛ばし、早く寝てしまおう、と躍起になりながらも再び目を閉じた。


「ん、…キリさ、ん…」

「……………………」


彼女のあどけない声の寝言が空間に溶ける。またもや熱くなる自分の頬を自覚しながら、まだ先が長い夜を窓の外の月の光を浴びながら見つめていた。

















20081014

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