ダブルアーツ

□過去にさえ嫉妬して、
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(空白の四年)(エルレイン)



「協会の支援が村に着いた時、凄い可愛いシスターが居るなぁ、ってびっくりして、…エルレインが初めに治療してくれただろ、そん時から俺…」


東の国。
ニホンという国はトロイに末期になる程侵されていて殆どの人がトロイ感染者だった。小さな国、でも人々は繁栄していて、まさか…こんな海を越えた国にまでトロイが…と恐ろしさを改めて塗り付けられたのを覚えている。
目の前に居る彼は私のニホンに来てからの初めての患者になった人だった。トロイが治ってもニホンに建てた支部協会によく遊びに着てくれた。
とても明るくて、気さくな人。汗を流し、スポーツに励む彼は、トロイに阻まれていた夢が叶いそうだと、太陽と青い空をバックに笑った日は、忘れられなかった。
私たちは、仲が良かったのだった。


「…ずっと、エルレインが好きだったんだ…。」

「…………、」

「悩ませてごめん。エルレインには、心に決めた奴が居るんだよな…。でも、ごめん、俺もエルレインが好きだ。」


彼には前に少しだけ、話したことがある。
トロイのワクチンはどんな奴が考えてくれたんだろう、すごいな。と語る彼に、救世主の、キリさんの話をしたことがある。すげー!と目を輝かせて見たこと無いキリさんに感謝を言いたいとうずうずして、
彼は無邪気だった。とても純粋で、素敵な男の人だった。
でも、


「ごめん、なさい……」


頭を下げると彼が息を飲んだのが分かる。


「…そう、だよな、…」

「私にはまだ、あの人を忘れるわけには…だから、」

「頭を上げろよ、エルレイン。女の子が男に頭を下げるなんてしなくて良い。」

「……アナタには、私なんかより、素敵な女性と幸せになって欲しい…です、」


頭を上げると少し泣きそうな顔をした彼の姿。でも笑って、私の頭を撫でた。
彼は一際お人好しだとからかわれることがあった。それに甘んじるわけではない。それでも、私には、約束があるから、


「…まぁそいつが嫌になったら、また俺んとこ来てよ。」

「あはは、嫌になったらですか。他の女性と出会ってる方が早いですよ。」

「相変わらず手厳しいなぁ、エルレインは。」


告白を無下にされたとしても、笑って今を過ごせるほど、彼は優しい心の持ち主で、
協会がニホンを去るときも、彼は見送りにきてくれた。またあの屈託の無い素敵な笑顔で、私に手を振ってくれたのだった。


―――――――――――――


「…へぇー…」

「……………………」

「そういう純愛ストーリーがあったわけね。」

「…、キリさん程ではありませんよ。」


懐かしいルチル家のソファに腰掛けキリさんと暴露大会、と言ったところか。
成人を迎えた私達は少しだけ大人になったが、まだ変わらず昔の様なやりとりを続けているわけだが、キリさんが拗ね始める。でもそんなの予想の範囲内で、先ほど聞いた(吐かせた)キリさんのプレイボーイ記のことを突いてやると、ぐっ、と及ぶキリさんの声がした。


「………オレと駄目になったらソイツんとこ行くの?」

「え…?」

「……行かないよな…いや、うん、行かないよな…まずダメになるわけないし。」


ブツブツと呟きながら段々と暗い顔になる彼を見て思わず笑みが零れる。
ついにはクスリ、と小さな笑みが声になって零れてしまった。


「…何笑ってんの…」

「キリさん、嫉妬して下さったんですか?」

「…、そ、りゃあ…まぁ…」

「私も。私も女の子達に嫉妬しました。」

「え、まじ?」

「はい。」


あ、キリさんの顔が赤くなった。と思いきや、この自身の顔の熱も気のせいでは無いだろう。赤くなってるであろう自分の頬に、彼は優しく手を添えて、

そのまま優しく
影が重なった




――――――――――――――


日本編長くてすみませんんんん!
こういう良い人とキリの間で揺れるエルーが書きたかったんです\(^O^)/もちろんエルーは他にも沢山の飢えた野獣共に求婚されたに違いない!なんて思ってます。

ご拝読、ありがとうございました!






20081111

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