ダブルアーツ
□リアル
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重い瞼を開ければ、土砂降りの雨に打たれ、高原の大地に身を委ねていた。冷えた身体。腹部から止め処なく流れる血液。
最後に見たのはなんだっけ。
そういえば、ゼズゥのつまらなそうにこちらを見下す顔だった気がする。
右手には何もない。
左手にも何もない。
感じるのは、滴る水と、泥のじゃりじゃりした感触だけ。
「(ああ…失敗したの、か…)」
情けないことに、その場から動けそうになかった。倒れ、雨に打たれ衰弱し、色を無くした目が水溜まりに映る。
どうして生きているのだろうか
「(え、るー…)」
どこにいる、
そう呟いた声は当たり前のように雨の音が邪魔をした。
右手には何もない
左手にも何もない
ただ自分と
冷たく、泥に汚れてしまった彼女の白い服だけが
リアルを見せてきただけだった。
「(、)」
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