ダブルアーツ

□リアル
1ページ/1ページ



重い瞼を開ければ、土砂降りの雨に打たれ、高原の大地に身を委ねていた。冷えた身体。腹部から止め処なく流れる血液。

最後に見たのはなんだっけ。

そういえば、ゼズゥのつまらなそうにこちらを見下す顔だった気がする。
右手には何もない。
左手にも何もない。
感じるのは、滴る水と、泥のじゃりじゃりした感触だけ。


「(ああ…失敗したの、か…)」


情けないことに、その場から動けそうになかった。倒れ、雨に打たれ衰弱し、色を無くした目が水溜まりに映る。
どうして生きているのだろうか


「(え、るー…)」


どこにいる、
そう呟いた声は当たり前のように雨の音が邪魔をした。
右手には何もない
左手にも何もない


ただ自分と
冷たく、泥に汚れてしまった彼女の白い服だけが
リアルを見せてきただけだった。












「(、)」













.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ