鶯短編小説

□鳥
1ページ/1ページ

【鳥】





快晴の空の下

漆黒の鳥が翔ぶ


陽の光を受け

輝く双眸には

一羽の小鳥


鋭い眼光を

一段と煌めかせ

重力に従い

一気に落ちてゆく


その刹那

風音が耳を駆け抜け

翼が風を切る

落下速度は加速を続け

終には頂点に達し

周囲の風景は

無数の線になる

唯一

獲物の姿を残して


目にも止まらぬ速度で

標的へと一直線に迫る

その姿は

まさに弾丸


漆黒の弾丸は

一羽の小鳥を貫いた



翼を貫かれた小鳥は

ただ、ただ

堕ちてゆく

堕ちてゆく――――




「あぁ、やられた。」



そう思った



だが

不思議と

怒りは湧いてこなかった


自分自身

理解していたのだと思う

命の輪の中にいる限り

いつかこうなることを




あぁ

でも


最後に一つ


望むとすれば


また




「空を、飛びたい」





―――命が一つ


また、消えた


輪は

際限無く

ゆっくりと

廻り続ける

いつまでも

いつまでも







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ