□拙者だけの
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「ック…ハッ…離せ、っ…万斉っ…っ」


細い細い首を、ゆっくりと締め上げていく。


あの晋助が

いつも偉そうな顔をしている晋助が

こんなにも表情を歪める。


あぁ、きっとこんな表情拙者にしか見れぬのであろう。

他の者ならば、晋助の首を締めることも出来ぬ。



「晋助、苦しいでござるか?」


「っ、ッハ…っ」



キツくこちらを睨んでくる表情すら愛しい。

滅多に泣かない晋助の目尻に浮かぶ涙を舌で舐めとる。


指に力を込めるたび晋助の身体は小さく跳ね

その表情を更に苦しそうなものに変える。


表情が歪むほど

自然と笑みがこぼれる。


きっと拙者はおかしいのでござろう。

しかし…人斬りなのだ、おかしくないはずはない。

だから…拙者は普通の、人斬りだ。



さっきまで真っ赤だった晋助の顔から段々と色が抜けていくのを見て、

ゆっくりと、指の力を抜いていく。

拙者とて、愛する者を殺したい訳ではない。


一気に息を吸ったせいか、また顔を真っ赤にしながら咳き込んでいる晋助を抱き寄せ、耳元で囁く。






「晋助を殺せるのは拙者だけでござる」



拙者を殺せるのも、晋助だけだ。







晋助の音色が少し嬉しそうに、更に歪になった気がした。







end
 

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