short story

□鬼は秋に目覚める。
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攘夷戦争時代、季節は春。浮き世の夢を見る吉原は男達で溢れていた。
そんな賑やかな人混みに紛れ銀時は一人の女に会いに行く。

「旦那。桔梗ですかい?」

「ああ。」

狭い部屋に通される。綺麗とは言えないが可愛く愛想のいい女がニコニコと笑っていた。

「またおせっすな。旦那。桔梗は嬉しいでありんす。」

「おべっかでも嬉しいねぇ。」

銀時は桔梗を抱き寄せると胸に顔を埋める。柔らかい肉に独特の甘い香り。桔梗の感触に癒される。

「旦那は半年に一回しか来てくれなせん。その髪が銀髪じゃなきゃ忘れるとこでありんす。」

「可愛いこというじゃねーか。小指でもくれるのかい?」

銀時は桔梗の小指を見る。両手の小指はきちんとその手に付いている。

「真夫などありゃーせん。」

桔梗は悲しげに笑う。

「男は厄介な生き物でありんす。無邪気で甘えん坊で優しくて、抱かれる妾が可愛い可愛いとはまって鬼になりんす。」

「俺も人斬り鬼さ。同じ鬼なら怖くねーよ。」

「ふふふ。可愛い、可愛い。」

銀時は桔梗を押し倒すと熱い夜に身を沈めた。





あれから半年。季節は秋。吉原に行くのは危険だが辰馬と物資の補給に来たついでに足を向ける。

「おんしゃ、あの桔梗とかいうのに会いに行くがか?」

「ああ。お前どーするよ。」

「わしゃ張り見世眺めてきめるき、明日このあたりで待ち合わせでいいじゃろ。」

銀時は解ったと言うと辰馬と別れる。桔梗のいる店の張り見世を格子越しに眺める。桔梗の姿は見当たらない。銀時は客引きをしている男に声をかける。

「桔梗ですか・・あれはもうダメでさぁ。床についちまって相手はできませんぜ。」

「それでもかまわねぇ。床代は払うから合わせてくんねーか?」

「旦那がそう言うなら。」

薄暗い廊下の奥の奥。木の引き戸を開けると三畳ほどの小さな部屋の布団の上に桔梗はいた。痩せてはいたが桔梗はニッコリと笑う。

「旦那・・きてくりゃてありがとやんす。」

「桔梗・・お前。」

「嬉しいでありんす。でももう可愛い可愛いと抱いてあげることはできなせん。」

銀時はギュッと桔梗を抱きしめる。桔梗は微笑む。

「旦那、歌を歌ってあげなんしょ。膝枕で。悲しい顔はやめなんし。」

銀時は何も言わず細くなった桔梗の太股に頭を乗せる。桔梗は可愛い可愛いと銀時の頭を撫でて笑う。

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