short story

□秋雨が運んでくるのは感傷と恋人。
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秋の気紛れな空はさっきまで晴れていたのに突然泣き出して大粒の雨を万事屋の窓に叩きつけていた。
こんな日は動くのも億劫で暗い室内に電気もつけず、銀時はただぼんやりとテレビを見ていた。

「寒ぃ・・・。」

裸足の足は足先がじんじんとするほど冷えていた。温めようと手を伸ばしてやめる。今はこのままがいい。
雨の音とテレビと暗い部屋。外の騒音は雨に消され、まるで世界でただ一人になったようなそんな感覚に陥る。

「とーしろ・・・」

愛しい人の名前を呼べば肌が寂しいとザワザワ叫びだす。
会いたいと心はキリキリと心臓を締め付けて発作のように呼吸を乱していく。
憂鬱で寂しさの満ちた空間に身体を沈めて銀時は微睡む。嫌ではない、むしろ心地好ささえ感じる。
自分の肌が誰を求めて叫んでいるのか、自分の心臓は誰のためにキリキリと痛むのか、心と身体に認識させて脳は悦に入る。

「ぎーん!いるのか?」

万事屋の玄関をガラガラと開けて土方は暗い室内に足を踏み入れる。
ソファーに深く座りウトウトとしていた銀時がふわりと顔をあげる。

「いらっしゃい。」

憂鬱な雰囲気をまとい柔らかく微笑む銀時は今にも消えてしまいそうで、土方は銀時の横に座ると抱き寄せる。

「こんな暗い部屋で身体冷やして、いい大人が何してんだ。」

「ん?確認作業。」

土方は冷たくなった銀時の足先を手のひらで包むと、熱を移していく。

「なんの確認だ?」

「ひみつ。」

銀時は土方にギュッと強く抱きつく。土方が強く抱き返してくると銀時の肌や心、血液さえも土方を求めて騒ぎだし痛いほど心臓を締め付ける。

「とーしろ何しにきた?」

「補充。」

「何を?」

「ひみつ。」

二人はクスクスと笑いながら唇を寄せていく。似たようなことを思っていたのだと思うと、それすら愛しくて身体が震える。

「とーしろ時間あんの?」

「雨が止むまでは・・・。」

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