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うまい棒ですヨ
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「んっ
リーダーではないか。」
「あっヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。」

二人が手を伸ばしたのは、同時だった。






『んまい棒ですヨ』






ここは、団子通りの小さな駄菓子屋。
神楽がよく酢昆布を買いにくるところである。
数分前、神楽は酢昆布が目当てで駄菓子屋にきた。
だが、酢昆布はまだ入荷していないという事で、
桂が以前言っていた、んまい棒を買ってみようと思ったのだが。

「リーダーもんまい棒を買いに来たのか?」


…まさか、この男も来ていたとは。
テロリストが昼間にのんびり駄菓子を買っていてもいいのだろうか。

「ううん、酢昆布買いに来たアル。
でも、売り切れてたからコレ買おうと思ったネ。」

「そうか。
だがリーダー、すまんが違うのにしてくれないか。
ここのんまい棒じゃないと爆弾が上手く爆発しないんだ。
最低でも20本欲しい。」

今、並んでいるんまい棒は、20本ほどしかない。

「ちぇっ仕方ないアルな。」

神楽はしぶしぶ桂に譲った。
別に、取り立て欲しかった訳でもないし。

「 (何買おうかな。) 」

そう思うと神楽は、適当に駄菓子を手に掴んだ。


んまい棒も無くなってしまったし、他に興味をそそられる物が無くなってしまったからだ。

そして選び終わって、おばちゃんに渡そうとした時。

「リーダー、俺が買ってやろう。」

と言って、ヒョイっと神楽の駄菓子を持ち上げた。
突然の事で固まる中、桂は「これ下さい。」と言っておばちゃんに駄菓子を渡し、会計を済ませていた。

「ほら、リーダーの分。」

袋は分けて貰い、桂は神楽の選んだ駄菓子を渡した。

「じゃあな、リーダー。」

しばらく固まっていると、桂は神楽に背を向けて歩きだした。
神楽はそれでハッとした。
まだお礼を言ってない。
急がないと、桂が行ってしまう。
神楽は息をスゥーと吸い込み、一気に叫んだ。

「ヅラぁぁぁ!!
ありがとー!!」

神楽の叫びで桂は驚いたような顔で振り向き、そして少し笑ってまた歩きだした。




「(この駄菓子、大切にしよう。)」



神楽は、桂が買ってくれた駄菓子の袋をギュッと掴み、思った。





――――糸冬――――

 

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