更新用ブック2

土方さんの苦労
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いつもと変わらない見回り。
こんな平和そうな町でも、事件は日常茶飯事、必ずどこかで起こっている。
よく目を光らせて、耳をすます。
……だが。
今日は、珍しく至って平穏な昼間らしい。
どこへ行っても、怒鳴り声も、泣き声も何も聞こえない。
いつもこうであって欲しいものだ。

「おい、そこのマヨネーズ男。」

「…………………」


…平和な時間よ、さようなら。
安らぎの時間よ、さようなら。

「聞いてんのかマヨネーズ!
こっち向け!」

「………俺はマヨネーズそのものじゃねェ!!」



土方さんの苦労




「おい、何で俺がこんな事しなくちゃならねーんだ!」

「何言ってるアルか。
部下の責任を取るのが上司の役目ヨ。」


草の根を分けて、土方は頬に通る汗を拭った。
いつもの髪飾りを外している神楽を見て、土方は深い溜め息を漏らした。
………まさか。
こんな事になるとは思わなかった。

「あの野郎…!!」

土方は、数時間前サボりに外へ出て行った、沖田の顔を思い浮かべた。


一時間前。
公園のベンチで涼んでいた神楽は、沖田に喧嘩を売られ、いつも通りその喧嘩を買ったまでは良かったのだが。

『その団子頭、たまには下ろしてみたらどうだィ?』

そう言って、沖田は隙を見て、パカッと神楽の頭から髪飾りを取り、林の中へ投げ込んだ。
神楽、驚愕。

『ああぁぁぁっ!!』

大切な、髪飾り。
寝るとき以外、いつも肌身離さず身に着けていた。
もはや、体の一部とも言えるものだった。
ソレが、大きな弧を描きながら、静かに林へ落ちていった。
神楽が、しばらくショックのあまりボーっとしていると。
沖田は、戦意を無くした神楽をつまらなく思ったのか、いつの間にかいなくなっていた。

それから、ただ茫然としていると。
やけに全身真っ黒で、煙臭い男が目に入った。
自分の記憶が正しければ、確かあの男は、あの憎きサディストの仲間。
神楽は、ちょうどいいと言わんばかりに話かけたのだった。


「おい、本当にここら辺に投げたんだろーな!
全然見つからねーぞ」

「こっちアル!多分」

「多分ってなんだ、多分って!!」

神楽と土方は、地面に広がる枝をパキパキ踏みながら、目を凝らして髪飾りを探していた。
…全く、見付からない。

「あ、見るネ、マヨネーズ。
エロ本があった!」

「何見つけてんだよ!!」


ヤバい、頭痛がしてきた。

「(大体俺、関係無くね?)」

土方は、神楽を睨み付けながら、迷惑そうに眉を寄せた。
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