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素直じゃねェ子供
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破壊された駄菓子屋、そこら中にあるプスプスと鳴る黒こげの謎の物体。
逃げゆく人々、あまりの修羅場に泣きわめく子供。

そこに、二つの影。

「チャイナ、今度こそ決着つけようじゃねーかィ」

「望むところアル!
お前なんかケッチョンケッチョンにして二度と拝めない面にしてやるネ!
覚悟しろサドコノヤロー!!」





「…覚悟するのはオメーらだァァァァ!!」


そして、額に筋を浮かべる男が、一人。


『素直じゃねェ子供』






男臭さがムンムン漂う昼間の屯所。
その広い屯所の一室に、低い怒鳴り声が響いた。


「チャイナ!!
もうこれで何件目だ!?
俺が始末書をどれだけ書いてると思ってんだ!!」

真選組の頭脳と謳われる、鬼の副長こと土方 十四朗。

その男は今、一人の小柄な少女を叱りつけていた。

「うっさいネ、マヨネーズ男!
大体アイツから喧嘩ふっかけてくるアルよ!?
何で私だけ怒られなくちゃならないアルか!」

と、小さな身体で大きく怒鳴って言い返すのは、神楽。

土方と同じく怒りを露わにしている彼女は、さっきまで沖田と接戦していたらしい。

その証拠に、彼女の白くきめ細かな肌に目立つ肉色の細い傷が、あちらこちらにチラホラ見える。
その沖田との戦いで、建物を破壊してしまった事で今、彼女はこうして叱られているのだ。

土方は、自分に反抗してくる小さな少女に苛立ちながらも、自分も負けじと言い返す。

「相手にしなきゃいいだろーが!
それに今、総悟は罰として大量の始末書を書いている。
しょっぴかれてんのはお前だけじゃない。」

土方がそう言うと、何も言い返せないのか、神楽はムスッと黙った。
土方はそんな神楽に眉を寄せると、くわえていたタバコを灰皿に潰し、神楽に背を向け始末書の山が出来ている机に向かった。

「次こんな事したら、お前の代わりにあの万事屋の野郎をたたっ斬る。
覚悟しておけよ。」

「そんな事したらお前を二度とマヨネーズを食べれないようにしてやるネ。」

「…分かったら、早く屯所から出てけ。」

この娘なら本当にやりかねない、と思ったのは黙っておこう。

神楽に説教をし終えた土方は、黙って始末書に筆を通す。
神楽は、正座をしたまま動かない。

ただ、じーっとこちらを見つめる。
その視線に集中力を持っていかれないよう、筆を持つ手を休めない。

だが、それでも神楽は土方を見つめる。

ジロジロジロジロ
ジロジロジロジロ
じーっと。
神楽は、土方を見つめる。

5分
10分
20分

休まず、瞬きも疎かにして、じーっと土方を見つめる。
ネバネバ絡み付く視線に、土方はついに動かしていた筆を置いた。


「おい、チャイナ。」

「何だマヨ。」

「いや、その台詞マヨの部分チャイナに修正して打ち返す。
何さっきからジロジロ見てんだ、コラ。」

土方が額に筋を浮かべて言うと、神楽は無表情で言った。

「つまんないアル。」


「は?」

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