更新用ブック

銀ばーさす土
1ページ/3ページ



「ワンワン」

突然の犬の声。
攘夷浪士、騒ぎ事など無いか目を光らせていた彼は、この後ろから聞こえたかん高い声によって、振り返った。

「…お前は、万事屋のチャイナんとこの…」

どん、と普通の犬と比べものにならない程の大きさの彼に、土方は眉を寄せる。

ハッハッハッ、と息を荒くしながら、じっと土方の方を見つめる。

「…餌なら万事屋の野郎に貰え。」

そのじっとりとした視線に、土方は眉間のシワを濃くした。
定春は、土方が突っぱねたにも関わらず、相変わらずじっとりと見る。

「(何なんだこの犬ッコロ)」

何て思いながら、土方は再び前を向き、職務に戻ろうとした。
すると、後ろにいた定春にいきなり隊服を口で引っ張られた。

「うおっ」

突然のその事に土方は思わず声を出す。
定春は、そんな土方に気にもかけず土方を引きずろうとした。

「おいっ!離せコラ!
公務執行妨害で逮捕するぞ!!」

頭をボコッと殴ってみるが、定春は離さない。
土方は、片眉を上げた。
どうもさっきからこの犬は、遊んで欲しいとか、そういうんじゃなくて、必死だ。

「何かあったのか?」

ふと思った事を口にしてみる。
そしたら、定春は「ワンッ」と勢いよく返事した。
多分、この犬ではどうにもできない何かあったのだろう。
土方は、そこから先に進むのを止め、定春の言う方向に着いて行った。






.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ