更新用ブック
□銀ばーさす土
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「ワンワン」
突然の犬の声。
攘夷浪士、騒ぎ事など無いか目を光らせていた彼は、この後ろから聞こえたかん高い声によって、振り返った。
「…お前は、万事屋のチャイナんとこの…」
どん、と普通の犬と比べものにならない程の大きさの彼に、土方は眉を寄せる。
ハッハッハッ、と息を荒くしながら、じっと土方の方を見つめる。
「…餌なら万事屋の野郎に貰え。」
そのじっとりとした視線に、土方は眉間のシワを濃くした。
定春は、土方が突っぱねたにも関わらず、相変わらずじっとりと見る。
「(何なんだこの犬ッコロ)」
何て思いながら、土方は再び前を向き、職務に戻ろうとした。
すると、後ろにいた定春にいきなり隊服を口で引っ張られた。
「うおっ」
突然のその事に土方は思わず声を出す。
定春は、そんな土方に気にもかけず土方を引きずろうとした。
「おいっ!離せコラ!
公務執行妨害で逮捕するぞ!!」
頭をボコッと殴ってみるが、定春は離さない。
土方は、片眉を上げた。
どうもさっきからこの犬は、遊んで欲しいとか、そういうんじゃなくて、必死だ。
「何かあったのか?」
ふと思った事を口にしてみる。
そしたら、定春は「ワンッ」と勢いよく返事した。
多分、この犬ではどうにもできない何かあったのだろう。
土方は、そこから先に進むのを止め、定春の言う方向に着いて行った。
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