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担任のシルバーエイトです
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可愛いな、と思った。
最初は。

けれどすぐに、そんな事を思った自分を殴りたくなった。

どこが可愛いんだチクショー!
とんだじゃじゃ馬じゃねーか!


担任のシルバーエイトです


モサモサモサモサモサモサモサモサモサモサモサモサ

何時間も先の昼間にしか聞こえるはずの無い音が、何故こんな早くから聞こえているのだろうか。

そう、それは、早弁している奴がいるからだ。

それは誰かと言うと。
…初めは皆、男子という予想だろう。
かく言う俺もその一人だった。
早弁してる女子なんて見た事ない。

けれど、彼女は、周りの想像を遥かに超えていた。


「おい留学生。
今、何の時間ですか?」

額に筋を浮かべて聞く銀八。
かなり怒っているようだ。
神楽は、そんな銀八を、手の箸を止める事無く見上げた。

「何言ってるアルか、先生。
今は先生の国語の時間ですヨ。」

「そう。
今は、銀さんの有り難ーい国語の授業であって、お弁当の時間じゃないんだよね。
分かってる?」

「はい、分かってますヨ。
国語の授業兼、早弁の時間です!」

「何この子!
国語の授業に早弁を兼ねてやがるよ!!
どういう教育を受けてんだコノヤロー!!」

「先生、あなたの教えの賜物です。」

「殴っていい?
殴っていいよね、コレ。
先生クビ覚悟でお前を殴りたいよ。」

ピキピキピキ、と銀八の額から音が鳴った。
額から、筋が出る音。
それに対し神楽は、銀八の注意を聞く様子も無く、次々と唐揚げやらタコさんウィンナーやら口に運ぶ。



…どこが可愛いんだ、どこが。
確かに、見た目は可愛い。
細い髪と、クリッとした目と、整った顔のパーツ。
可愛い、そりゃ可愛いさ。

早弁だけなら、まだ許せる。
だがコイツの問題行動は、早弁だけでは無い。


「……おい、そういやオメー、ノート無ェじゃねーか。」

「ちり紙交換に出しました!」

「何でだよぉぉぉぉ!!」


あぁ、泣きたくなってくる。
まだ、留学生してきてから1ヶ月そこらしか経っていないのに、緊張感ってモンが無い。
まったく、本当に面倒くせーガキを押し付けられたものだ。

銀八は、周りに大きく聞こえるように、「はあー」と溜め息をついた。
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