捧げモノ
□気が付けばそこに…
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春うらら。
気温も過ごしやすくなって気分がいい。こんなに気持ちいいんだから勉強なんてしないで、丸一日テニスをしていたい。
なんて。今は叶わないであろう事をぼんやり考えながら、俺は窓の外を眺めていた。そう、今は授業の真っ最中。
「謙也、」
「ん?」
隣の席の白石が話し掛けてきた。
「今日の帰り、買い物に付き合うてくれへん?」
「買い物?ええよ。」
承諾すると、白石は綺麗に笑って「おおきに」と言った。
今の今までテニスをしたいと願っていたのに、白石と買い物の約束をした瞬間には“早く放課後になって”に変わっていた。
白石は俺の心を動かす天才だ。
流石白石…と言うか…アホだな〜、俺。
●●●●●●
「っくしゅん!」
部活終了後の帰宅路、白石がくしゃみをした。
「寒いん?」
「ちょっとな。」
白石は夕焼け色の空を見上げながら答えた。
「春やー言うても、まだ朝晩は寒いわ。」
「俺はあんまし寒ないけどな。」
「それは謙也が体温が高いだけや。謙也クンはお子様やな〜」
「何やと!?お子様ちゃうわ!」
でも、この高めの体温のおかげで冷え症の白石を温めることができる。だから俺はこの体温の高さは別に嫌じゃない。
(ふー…)
空を見上げると綺麗な夕焼けの空。真っ赤……か………
「はは、金ちゃんみたいや」
「何が?」
「この空が」
「ああ、ホンマや。金ちゃん色やな」
白石も目を細めて笑った。
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