捧げモノ

□気が付けばそこに…
1ページ/6ページ





春うらら。
気温も過ごしやすくなって気分がいい。こんなに気持ちいいんだから勉強なんてしないで、丸一日テニスをしていたい。
なんて。今は叶わないであろう事をぼんやり考えながら、俺は窓の外を眺めていた。そう、今は授業の真っ最中。



「謙也、」


「ん?」



隣の席の白石が話し掛けてきた。



「今日の帰り、買い物に付き合うてくれへん?」


「買い物?ええよ。」



承諾すると、白石は綺麗に笑って「おおきに」と言った。
今の今までテニスをしたいと願っていたのに、白石と買い物の約束をした瞬間には“早く放課後になって”に変わっていた。
白石は俺の心を動かす天才だ。
流石白石…と言うか…アホだな〜、俺。




●●●●●●




「っくしゅん!」



部活終了後の帰宅路、白石がくしゃみをした。



「寒いん?」


「ちょっとな。」



白石は夕焼け色の空を見上げながら答えた。



「春やー言うても、まだ朝晩は寒いわ。」


「俺はあんまし寒ないけどな。」


「それは謙也が体温が高いだけや。謙也クンはお子様やな〜」


「何やと!?お子様ちゃうわ!」



でも、この高めの体温のおかげで冷え症の白石を温めることができる。だから俺はこの体温の高さは別に嫌じゃない。



(ふー…)



空を見上げると綺麗な夕焼けの空。真っ赤……か………



「はは、金ちゃんみたいや」


「何が?」


「この空が」


「ああ、ホンマや。金ちゃん色やな」



白石も目を細めて笑った。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ