short novel
□一方通行の悲恋歌
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こんな事になるなら、言わなきゃよかったって後悔した。
●●○一方通行の悲恋歌○●●
ぱちんっ
「……ん…」
耳元で聞き慣れない音を聞き、目を覚ました。外は暗くなってきていた。下に目を向けると、部誌が広げてあった。所々涙で濡れてしまっていた。どうやら部誌を書きながら机に突っ伏して寝ていたようだ。
(やってもうた…)
目を擦って涙を拭い、床を見てみるとシャーペンが転がっていた。シャーペンを拾おうかと思った時、机の隣に誰かがいるのに気が付いた。
…………財前だった。
「…自分、こないな時間まで何しとんねん?もう外暗くなってきてるで?」
財前に話しかけたが、返事をしないでじぃーっと俺を見つめていた。暗闇で気付かなかったが、財前の手には見慣れない物が握られていた。
「財前?何持ってるん?」
ライトを点けて財前の手からそれを取り上げて見てみると、その見慣れない物はピアッサーであることがわかった。
「これ、ピアッサーやろ?何や、また開けるんか?穴開けるんも程々にしぃや。」
言いながら気が付いた。
取り上げたピアッサーは、既に使用済のようだった。…ちゅーことは、もう開けたんか。
「……白石部長」
財前が近づいてきた。
左耳が熱い。
「何?」
肩を掴まれた。
俺は財前の耳を一瞬見たが、穴は増えてなかった。
肩を掴まれたまま部室の鏡の前まで連れて行かれた。
「え、何々?何やねん。」
「ええから。」
財前が俺の肩を掴んだまま鏡の前に立ち、俺の左耳近くの髪の毛を掴んで上に上げた。
……俺の左耳に銀色に光るものがあった。
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