short novel

□a song of sorrow
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『はじめまして、千歳千里です。熊本から来ました。宜しくばい、白石くん。』




優しい目。人懐っこい表情。ゆっくりとした仕草。



くぎづけになった。
目が離せなかった。


















好きだな………と思った。









●●○a song of sorrow○●●













「はぁ……」


授業中にも関わらず、小さな溜息が思わず出てしまう。あの日から彼が頭から離れない。瞳を閉じれば…彼。



(やばい…………重症や。)



思わず頭を抱えてしまった。
すると、隣の席の謙也が心配そうな顔でこちらを見ていた。



「大丈夫か、白石?」


「…あぁ……大丈夫や。」


「無理せんと具合悪いんやったら保健室行きや。」


「せやな………ちょお行ってくるわ。」



先生には腹が痛いとかテキトーな理由を言って教室を後にした。
生徒がいるとは思えないくらい静かな授業中の廊下を歩きながら考えてしまうのは、やっぱり彼の事。頭をぶんぶん振って頭から離そうとしてもまたすぐに考えてしまう。あの時に一目惚れしてしまったから。

よりによって何で男………

これが可愛い女の子とかならまだしも、なんで同性なんだ。
(世の中で否定されるにも程があるやんか。)
保健室へ行く気にもならず、階段を上り屋上に向かった。






●●●






ドアを開けた時の解放感。澄み渡った青空と温かい春の風が心地よい。
1番高い場所、水道タンクの上に行こうと梯子を上っていくと、見覚えのあるモジャ毛。頭から離れなかった人物。
胸が高鳴る。




「………千歳くん?」



千歳はゆっくりと振り返り俺の方を見た。目が合った瞬間、心臓が飛び出るかと思った。

千歳はすごく驚いた顔だった。




「白石くん?なしてこげんトコに?今は授業中っちゃよ?」


「千歳くんかてそうやろ。」



オサムちゃんが言っていた事をすっかり忘れていた。確かこの男、千歳千里は放浪癖があるらしい。学校に来ないこともよくあったのだとか……運よく来てもサボっていることが多いだとか。
(内申とかは大丈夫なんやろか)




「そーいえばそうばいね。」




思い出したかのように言って笑った。





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