ネームレス

□ツーマンセル
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ドアノブを回し、手前に引けばそこには1カ月前と同じ風景。

ベッドと小さな棚くらいしか見当たらない、生活感皆無の6畳間。
本来ならば解放されていてもいいはずの窓も、遮光カーテンによって遮られ、朝の日差しは室内には届かない。

私は背負っていた荷物を肩からおろし、手を離す。
ドスン、と音が地面に響いたがそんなのを気にする私ではない。

長期任務の後と言えば休暇、休暇と言えば睡眠。


暗部とは文字の通り、余り表立っては行動しない。
忍ぶ事こそ美学。

つまり何が言いたいかと言うと、行動するのはほぼ人が寝入った時間帯と言うことだ。
一般人と生活サイクルが全くの逆になり、只でさえ昼間は瞼をキープするのが難しいというのに、今のわたしは任務明け。
1カ月間は昼も行動していたため、ろくに寝ていないのだ。


私は靴を脱ぐと、面も背に担いだ刀もお構いなしにベッドへダイブした。
身体の体重でスプリングがギシギシと音を立て、身体が上下に弾む。

埃がかなり舞ったが、気にしない。
今の私には指先をピクリとでも動かす気力はなかった。

木ノ葉の暗部だって睡眠は必要だ。



「寝よう、寝てやるよ、休暇全部寝てやるよ…」



魂が抜けるように、ほぼ閉じられた唇から漏れ出した息なのか音なのかは、私以外誰もいないこの部屋の壁に吸い込まれた。



私はあと1週間は休み、もう2度と瞼を開けるのはごめんだった私は、そのまま眠気に身を任せる。


誰も起こしにに来ませんように、そう祈りながら。
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