少女の最強伝説

□05.おれ様なに様
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日吉side〜



「クソッ」



どこに打っても返される。
返されるんだ。


サイ術だと?
俺の実家でもサイ術のレッスンはやってる。
サイ術とは2本の細い短刀を両手に裏手で持ち戦う術。
護身用としては最強の戦法だ。


だが、こんな攻撃的なサイ術見たことがない。
サイの持ち方は、暗殺などでは裏手、攻撃では表手だ。
あの人の持ち方は不規則だった。持ち変えるその動き。
とても素人じゃなかった。

努力も知らないで、俺がどんな気持ちで正レギュラーになったかも知らないで!!!



何故何もせずにかすめ取るんだ!
何故何でもできるんだ!!


憎い憎い憎い。


会ったばかりなのに、俺はその完璧さを妬んだ。
努力もしないで!!!!



血走った眼でただ走る。
でも
俺はただボールを追いかけている内に、さっきの憎悪とは違う感情が湧いてきた。

あの人に下剋上したい。
あの人よりも強くなりたい。
純粋に思った。


そうか、俺はあの人に憧れたのか。
そして、鳳達に感じた気持は
  
嫉妬。


さっきの憎悪も嫉妬。
ああ、今の俺ではこの人に敵わない、さっきは感じなかったこの敗北感。
この人の体の動きを見れば、どれだけ強いかなんて分かるのに…


頭に血が上って、俺より下だと決めつけて。
自分の弱さを否定して。
努力しないであんなに美しいフォームになるわけがない。
実際俺と桜さんは天地の差じゃないか。


こんな感情を抱いた時点で器が違うんだ。


ボールをいくら追いかけても、届かない。
こんなにすごい人を俺は見下していた。
生まれたひどく深い罪悪感。



桜さんの打球が決まるたびに募る思い。
最後の1球が俺のコートを貫いたとき。



俺の心は自分の器を図り違えたことへの、やるせない気持ちでいっぱいだった。




日吉side end  
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