ネームレス

□追いかけっこ
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【カカシ】

あの暗部初の暗殺任務から、今日で一週間目。
恥ずかしながら、俺はやっとあの精神的ショックから立ち直りつつあった。
それなのにもかかわらず、なぜか任務が入ってこないので俺は自宅で過ごしている。

上忍の頃はもっと任務が入っていたはずなのに、暗部に入ればもっと忙しくなると思っていたのだがそれは勘違いだったのか。
だとしたら少し失望するが、今の俺には休養が必要だ。
どういうわけなのかは知らないが、久しぶりの一週間にもわたる休暇。
俺は自宅で"有意義"に活用していた。

暗部の心得、暗殺の基本、暗殺、暗殺…


今の俺の部屋は、物騒な本であふれかえっている。有意義に過ごした結果がこれだ。
もともと読書は好きだし、役に立たないことはないと思い始めたのだが、これが思いのほかハマってしまった。
そのおかげで、俺はこの物騒な本を毎日木の葉図書館から借りだすことになってしまっていたのだった。



「そろそろ最初に借りた本、返しに行かないとな…」



俺は自分の周りを囲うようにして積み上がった本の山を見回すと、我ながらため息をつく。
よくもまあ休暇だというのに本ばっかり集めたもんだ。どこかの体術バカに見せてやりたい。

俺は流石に整理しないとまずいという意識が芽生え、本の山を崩す。
とりあえず読み終わった本だけ集め、積み上げることに成功した。


「本を借りるのは今日で終わりだな。」


図書館に行くたびに本を借りていたら、キリがない。
この休暇もいつまで続くか分からないので、早速そのほんの山を両手に抱え、玄関に向かった。

腹も減ったし、昼飯にしよう。
俺は今日の午後の算段を立てながら、自宅を後にした。


***



「これ、お願いします。」



久しぶりに面も忍服も身に付けずに出歩いた木の葉の里。
目立たないようにと思っていたのだが、そびえたつ本の山を持っていたせいで別の意味で目立ってしまった。
通行人に変な目で見られたが、そんなのも今で終わりだ。
俺は迷惑なことに十数冊にも及ぶ物騒な本を図書館のカウンターにいる司書につきだし、その場を後にする。

司書のお姉さんには悪いことをしてしまった〜。
形式上心の中で謝っておいた。

あとは気になる本だけ本屋で買って、飯食って帰るか。俺は計画を練り直すと、図書館の出口に向かう。
が次の瞬間、俺の視点は一点に集中してしまったのだった。


「…どっかで見たことある様な。」


それは医学関連棚の本を物色している、黒髪短髪の後ろ姿。



  
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