ネームレス

□昇格
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昼間、木の葉隠れの里の一角、フェンスで囲まれた地区。
そのフェンスは錆びつき、掛けられた木札にはかがれかかった「第1演習場」の文字が張り付いている。
木々のない部分も昔は更地であったんだろうが、もう随分手入れがされていないらしく雑草が伸び放題になっている。
もう私の身長を超えたんじゃないだろうか。


第一演習場、それすなわち名前の通り木の葉で一番最初に作られた対忍演習場。
相当年季が入っていて、今のご時世誰も好んで修行の場に選んだりはしないだろう。
だがそこで、ひたすら術を極めようと奮闘している忍。私。

2m近くある雑草(?)の中に紛れ込み、二本の刀を振るえば私の周り半径1.4mほどの草が刈り取られる。
その次の瞬間、べつの場所で円形に切り取られた跡が。
その次はまた別の場所で。
上空から見ればきっと、ミステリーサークルが大量発生していることだろう。



今週一週間は休み。
カカシさんとツーマンセル組んでどれくらいになっただろう。
彼に対するデモンストレーション的なものも終わり、新人暗部から暗部になったカカシさんも私と同様に任務に忙殺する日々が続いていた。
もちろん私たちはこなす任務の9割方このツーマンセルで行っているため、カカシさんとは随分仲良くなってきた。
まあ抜群のチームワークで任務を完璧に遂行するもんだから"任務成功率100%"などと暗部内では結構有名になっている。
確かに100%は大げさだと思うけど、私たちは良くやっていると思う。そのせいでここ1年休みなく昼も夜も働かされたんだが。

そこで火影様が気を利かせて、一週間の休暇を下さったのだ。
休暇があるのはいいことだが、特に睡眠以外はすることも無いので、こうして自分の腕を磨いているのだった。
実践が何よりの修行なのだが、近頃は派手な戦闘もなく暗殺ばかり、止まった相手を殺して首を刎ねるなんて簡単なもので、体がなまっていることだろう。


私は刀を振るう手を止める。
すると、随分視界が開けた演習場。
修行に扮して草刈りまでやってしまった自分は、不本意ながらボランティア精神にあふれていると思ってしまうのであった。


「最近斬り心地悪いな〜、そろそろ鍛えなおすか…」



私は黒曜石色の刀を、暗部服のときとは異なり腰帯にさした鞘に納める。

私がその場から移動しようと瞬身の印を組もうとした瞬間、「ピーッ」と聞きなれた鳥の声が上空から降ってくる。
見上げればそこにはまた見慣れた鳥が、青空をバックに旋回している。
それは暗部招集の忍鳥だった。


「休みなのに…任務かな。」


私は折角の休みをつぶされるのかと不満に思いながらも、暗部服を取りに自宅へ戻るのだった。


 
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