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□初恋
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あなたは今、どこで何をしていますか?
私は、元気に暮らしています。
時々あなたを思い出しては、苦笑いしつつも暖かな気持ちになりながら。


高校2年生。
出会いは、ごくありきたりなものだった。
近所のファミリーレストランでアルバイトを始めた。
私はフロア担当で、あなたは配達担当。
最初は、全然目立つことのないあなたよりも、おもしろくて楽しませてくれる人達ばかりに目がいってた。

いつからだろう。
少しずつ話す様になったのは。
私もあなたも口下手だだから、全然会話にならなくて。
だけど、不思議と苦痛じゃなかった。
まわりの人とは違う誠実なところや、優しく話すところ、笑顔がちょっと可愛いところ…
知らない間に、あなたにどんどん惹かれていった。


携帯の番号を聞き出すことが、こんなに大変だなんて思わなかった。
友達や他の人には、「教えてください」って言えるのに、
なんて言ったらいいか、
どのタイミングで言ったら良いか、
変に思われたりするんじゃないか、
教えてもらえなかったらどうしよう
…って、考えれば考えるほど難しくてできなくて。
でも、
少しでも近くにいたいから、
少しでも知りたいから、
少しでも特別になりたいから、
がんばったの。
なんて言ったかも覚えてないくらい緊張して、ちゃんと登録できてたのだって奇跡的に思えるくらい。

それから細々と連絡できるようになった。
本当なら毎日でも送りたかったんだけど、嫌われたくなくて、なかなかメールできなかった。
メールで文をうっては、「バイトに行けば会えるし」って言い聞かせて消去、
うっては消去、
うっては消去…
そんな繰り返し。
真ん中の決定ボタンを押せば届くのに、いつも押すのは下のクリアボタン。


そのうち、まわりの人達が私の気持ちに気付き始めた。
今思うと、協力者というよりは冷やかしに近かったけれど、当時の私にとっては心強かった。
あなたが来る時は、一緒に遊びに連れてってくれたし、近くにいさせてくれた。
うれしかった。
仕事じゃないあなたに会うことができて。
またたくさん好きなところが増えて、知ることができて、うれしかったの。


初めて2人で出かけた日。
確か、ご飯を食べに行ったんだった。
あなたの車で軽くドライブして、昼食を食べに行った。
あまりの緊張に、多弁と無言を繰り返してたと思う。
味は、なんとなく美味しかった様な気がする。
あなたが話したことはキチンと覚えてるのに、自分が何を話したかはサッパリで。
助手席で、運転してるあなたを少しだけ見ながら、ポツポツ話すことに耳を傾けてた。


それから少しずつ2人で出かけることが増えてきた。
でも、誘うのはいつも私だった。
そんなことに気付きもせず、一生懸命あなたに近付こうとしていたの。



つづく
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