orphan*2=drug*(1/f*aube)=”緤”

□monologue
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・・・光。

俺の光。

まばゆいだけのサーチライトとも違う。
頼りないキャンドルの炎とも違っていた。

例えばそれは、
こんな人生最悪の日に。

灯された暖かなライトブルーの強気な瞳。


なあ、メロ。
ちぎれた俺の1/2の羽根は、お前だと。
あの時そう思ったんだ。


〈orphan*2=drug*(1/f*aube)="緤"〉









白い雪が降っていた。
雪が何もかもを浄化するなんて、嘘。

歪んだ心まで浄化させるには、たぶんあと10tは必要だろ。


もしも神が存在するならば。
聞きたい事があった。


俺は何の為に、生まれてきたのか。


―――父サン何故僕ヲ殴ルノ?

そこに意味はあったのか?
そこに価値はあったのか?


長年の疑問はいつしか無理やり己を納得させる常套句に刷り代わった。

ああそっか。
俺はイイ子。

どうでも、イイ子。

ならもっと。
(強ク殴レバイイ)

いっそのこと・・・。
(僕ヲ殺シテ)



そんな日々が何年続いたろう。
ある日突然、降って湧いた人生の転機。
転機の全部が全部、良い方向に向くとは限らない。



そう。
突然親父からの不条理な拳から解放されたと思ったら。
だ。
連れて行かれたところは・・・。

戦場。


これには俺も驚いた。

奇しくもクリスマス当日ってのは、なあ。
イカれたプレゼントのつもりなのか。
もしくはジャパニーズ映画の影響?

なんにせよ戦場のクリスマスをリアルタイムで体験するとはね。
全く。
蹴りたいのはジーザスの背中だ。


俺はあのクソ親父に売られたんだと、幼い頭で理解した。

用がなくなりゃ捨てるのか?
テメェで始末する度胸もなかったのか?

どっちにしろフザケタ運命。

要は虐待児童がなんのことはない、少年兵士になっただけだ。
ステージアップしたらデッドラインもアップ?

ハハ。
神ってヤツは随分とブラックジョークが好きらしい。
マジ冗談みてぇな顔しやがって。
シューティングゲームでももっとマシなレベルの上がり方するっつの。


そうして晴れて新しい称号を与えられた訳だが。

戦場ではありとあらゆるジェノサイドなスキルを叩き込まれた。
武器全般の取り扱い。
接近戦での戦い方。

確実に命を奪う方法。

そして俺は・・・。


イヤ。
この話はやめよう。
気が滅入る。
それに
こっからが本題だからね。

兵士だった俺は、ある時ひょんな事からその男に会った。

ばったり出くわしたそいつに圧倒的な威圧感を覚え、俺は何の勝算もないまま咄嗟に刃を向けた。

今考えると相当危険な賭けだよね。
ガキゆえの浅はかさ。

だけど。
そいつは何のためらいもなくナイフを握り締めると、したたり落ちる赤の世界で俺にこう言ったんだ。


「君の居場所はここじゃない。
私についておいで」


まあ、ね。
そいつが今となっちゃ柔和な好々爺を演じてる、ワタリ・・・キルシュワイミーだったって訳だ。



そうして俺は促されるままにワイミーズハウスの門をくぐった。
錆付いてた運命の輪が、ゆっくりと旋回した瞬間だった。








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