orphan*2=drug*(1/f*aube)=”緤”

□シンクロニティシティ
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光が照らすのは、闇?

だとすれば。
それがどうしょうもなく濃い闇でも・・・届くかな?

そしてこれは、業(カルマ)ってヤツかな。








ハウスに入ったら。
いきなり囲まれた。
更に人気のない教室に連れ込まれた。
随分と手荒い歓迎。

お堅いだけの頭脳集団だとばかり思ってたが。
へぇ。
なかなか骨っぽいじゃん。

さて問題デス。
そんな時、どうする?

まあね、そりゃ相手の出方次第。
ざっと見渡すと、どうやら上級生なのか俺よりタッパがある奴ばかり。
だが丸腰。

こんなん今までの最前線に比べたら。
余裕っしょ。

「なぁ、さっきの奴、なんて名前?」

「さっきの?」

こんな状況にも関わらず臆する事なく話し掛ける俺に、相手が一瞬たじろいだ。

「ホラあの金髪美人のおかっぱちゃん」

「なっ、お前、口を慎めよ。
アイツはメロだ。
ハウスの中じゃニアと並んで皆、一目置いてる。
メロには逆らわない方が身の為だぜ」

「ふーんメロって言うんだ。
じゃこれもメロの指示?」

「生憎だがこれは俺らの独断だ。
生意気な新入生が来ると聞いたら、そりゃたっぷり可愛がってやるのが礼儀だろ?」

数人がジリジリと距離を縮めてきた。

「マジ?残念。
俺可愛くないし、ソッチの趣味ナイんすよね先輩。
てかメロの指示じゃないなら手加減しないよ?」

「お前っ!
何様・・・っ・・・痛っててて!!」

掴みかかってきた上級生の腕を捻り上げる。
楽勝。
懐がガラ空きはダメでしょ、先輩。

「ん?何様って、俺様。
てかどうするの?
腕折れてもいーい?」

「うわ・・・やめ・・・」

「っと。
はい、オシマイ」

骨が軋む音に被るように、ドアノブの回る音がして、咄嗟に手を離した。
気配は・・・二人?


不躾にズカズカと乱入したロジャーとかいう爺様が、俺を取り囲む輪を散らした。
一目散に逃げて行く幾つもの背中。
バイバイまたね、先輩。

しかしワイミーズハウスってのはワタリを筆頭にジジィしかいないのかね?


「マット、大丈夫か?」

大丈夫か?なんて愚問だろ。
騒ぎを起こされると面倒くさいからなるべく大人しくしててくれ。
そう顔に書いてあるよ。
だから俺も定形文を引っ張り出して答える。

「別に。
なんにもされてないよ」

したけど。

「……まあ、みんな仲良くなりたいんだ。
許してやってくれ」

アハハ。
仲良く?
征服の間違いじゃねーの?

心配しなくても、ソツなく生活してやるから安心してよお爺ちゃん。
・・・表面上はね。

あ、でも。
メロに関してだけは、別問題かも。
そこだけは大人しくする自信がないかも俺。
なんでだろうね。
今日会ったばかりなのに。
こんなにも気になるのは・・・きっとアイツと。


ひょいと覗いた教室の外に揺れるブロンドを認めて、なんだか急に胸が締め付けられた。


重なる。
影。

揺れる。
シャンパンゴールド。

違う、違うよ。
キミはメロ。
アイツは・・・。




「ロジャー、俺メロに案内してもらうから、イイや」

「なっ!?」

何か言いたげなライトブルーの瞳がこちらを見据えた。


「ねぇ、教えてよ?」

ハウスの間取りとキミの事。
そして俺に示して。
キミは「メロ」なんだと。


メロの手首を無理やり掴む。
背後から聞こえるロジャーのシニカルなお小言を無視して廊下を駆け出した。


「ちょっ・・・待てよ。
お前、なんなんだ」

「メロ、手首細っせぇね」

「人の話を聞け!」

手を振りほどかれそうになったけど。
ゴメン。
も少しこのままがイイ。

「ね、メロちゃんはさ」

「ちゃん・・・だ?
お前誰に向かって口きいてんだ、気持ち悪りぃ」

睨むその目はまるでサーバルキャット。
問答無用に惹き付けられる。

「いいじゃん。
てか俺、一瞬女の子かと思っ・・・痛ってぇ!」

メロの手を引っ張る俺の背後から鈍い痛み。

イヤ背骨に膝蹴りって!

人体の真ん中、正中を通るラインは急所だって・・・あ、わかった上での攻撃ね。
しかもそんな華奢な身体から繰り出される蹴り。
めっちゃ重いんデスけど。


女の子発言は禁句。
細い割りにタフ。
喧嘩慣れしてる。
意外と・・・責任感が強い?

その証拠になんだかんだ言いながらもちゃんと案内してくれてる。
真面目なんだ。

「お前、今度そんな事言ったら確実に折るからな」

「心までは折らないでね」

「うるせぇ再起不能になるまで殺ってやる」

超絶口は悪いけどね。


二人、肩を並べハウス内を一周した後、中庭に出る。
途端、メロが話し掛けてきた。

「お前、いくつだ?」

陽の光を反射した髪がキラキラと眩しい。
金色が透けて見える。
限りなく透明に近いゴールドってヤツ?

「12だけど?」
「タメかよ。
いやに大人びて見えるな。
このマセガキが」

「マセてません。
てかずっと大人の世界にいたからじゃない?
ソコにしか居場所がなかったし」

「へぇ。
だからあいつらに絡まれんだなお前」

「あいつら?
アハハ、あんなの絡まれたうちに入んないよ。
楽勝ラクショー」

「楽勝って・・・お前、もしかしてやり合ったのか?」

「合ってはナイよ。
正確に言うと俺が一方的にやっちゃっただけ。
悪い事したかな。
でも不可抗力でしょ?
あれ?もしかしてメロの手駒だった?」

「イヤ俺は元からつるむのは好きじゃない・・・つか、あいつら相手に一人でか?」

「うん?
メロに比べたら余裕だろ?」

「ハハッ、なんだお前」


ふいにメロが笑った。

うわ。ちょっ!
なんっ・・・つう儚げな表情をするんだろうキミは。

また胸が締め付けられる。
綺麗過ぎて、泣きそうになる。

待って。
その感情は切ないの?
愛しいの?
ううん。
俺にもよくわかんないや。

でも。
ずっと見ていたい。
メロの傍で、この笑顔をこの先もずっと見ていたいと思ったんだ。


ハッと我に返ると、中庭にいた生徒達からどよめきが起きていた。
頬を赤らめている女子生徒もいる。

え?何この状況。
ああ、そっか。
メロの笑顔か。


周りの反応からして、メロが無防備に笑う事はきっと珍しいんだろう。
いつの間にか俺たちの周りにはギャラリーがいっぱい。
まあでもその心理、わからなくもない。
ミケランジェロの絵画のような神々しさだもんな。

渦中のメロは少しバツが悪そうにうつむくと、ぶっきらぼうに行くぞと呟き、俺の手を取った。

それに対してもまた、嬌声が上がる。


この日から俺には、
「生意気な新入生」の他に
「あのメロを笑わせた勇者」という称号が加わった訳で。


よくわかんないが、なんだかあっという間にハウス内に知れ渡り、俺は有名人になってしまった。


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