orphan*2=drug*(1/f*aube)=”緤”

□セイラン
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「メロー…」




「メェーロォー!」





「……」

「…………」




「おい、無視するなよ」


「…………そこの金髪返事しろ」


「……」


「ひぇ!」



ありったけの恨みを込めて首だけで振り向く

俺の様子に「こえー!」と笑いながら赤毛の少年は毛布を頭ごとかぶった



それを見て、俺は大げさにため息をついて再度机に向かう



何がそんなに楽しいんだ?



――本当に、

不思議なヤツ……











――マットがここに来て一週間。


いや、正しくは俺の部屋に住み始めて一週間が経とうとしていた。




丁度この頃の俺は、寝る間も惜しんで勉強に励んでいた時だった。


別に真面目だとか、そういう訳じゃない。
負けたくない、その一心だ。



どんな時でも気は抜かない。
と、いうより抜けなかった。



ルームメイトが変わっても考えを曲げるなんてもんはしない。そもそもそんな考えは毛頭なかったが。



……嫌なら出て行けばいい。

そう思っていた。



実際、過去に何度もルームメイトは変わっている。


明るくて寝れないとか、ペンを走らせる音がうるさいとか、なんやか
んやグズグズ言って出て行きやがった。



まあ、直接文句を言ってくるヤツは1人もいなかったが。


いつも後からロジャーに聞かされていた。

俺に直接言えばいい話なのにな。


文句を言うヤツは捻り潰してやろうと思っていたが、それを察したんだろうか。




まあ、部屋はたくさんある。
わざわざここにいる必要はない。


……それでいい。


1人の方が勉強もはかどる。


つい最近までいたルームメイトも、やっと出て行きそうだった。


理想としていた1人部屋が後少しで手に入る。


そう、思っていた。





「メロよ」


「…………」




……結果、そんな理想は赤毛のおかげで
惜しくも崩れ去ったわけだが。



「メロさんよー」



毛布に潜り込んでいた赤毛がひょっこり顔半分、目から上を出す。



まだ寝てないのか。

しぶといな……



参考書を眺めながら横目で確認し、チッと舌打ちする。




「そんな怒るなよ。
つか毎晩毎晩、飽きずに勉強してるけどさ。
それはそんなに楽しいのか?」



毎晩毎晩、懲りずに話しかけるお前もな。



いつもの様に無視を決め込んで黙々とペンを走らせる。



脳天気でいいな、お前は。


初めて会った時。
接触を試みようと思った自分が今となれば信じられない。



始めの印象が嘘のようにマットという人間はえらくフザケたヤツだった。





「金髪オカッパのメロちゃん♪
こっち向いてっ!無視はやめてっ」



……ほらな。


ペンを持つ手にグッと力が入る。
が、すぐに力は緩んだ。他のヤツらなら瞬時に俺の拳が飛んでいただろう。



でも。


マットの場合よっぽどの事がない限り出す気が起こらない。


本気でやり合おうとは思えなかった。


力で押さえつけてもどうにかなるような男じゃないと判断したのもあったが。




「まあ、いいか」と俺に思わせる事ができる唯一の人間だ。






溜め息を一つついてから、改めて勉強に取りかかった。









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