orphan*2=drug*(1/f*aube)=”緤”

□8番目の罪―8th sin's heart
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暴力は(仮)をつけましょう。






教室を移動しようと廊下を歩いていると、数人に囲まれた。


えっと。
君たちがご大層に翳(カザ)してる、それがここに蔓延るモラル?
だとしたら超くだらねぇモラトリアム。
猶予期間とか・・・マジイラネんだけど。


「ちょっと顔貸してもらおうか」

例の上級生に呼び出されたのは、俺がメロと同室になった2週間後の事だった。

「ヤダつってもどうせ無駄なんでしょ?」

「お前に断る権利なんてねぇよ」

ある程度は予想していたものの、こうもシナリオ通りだと逆にこいつらめっちちゃ素直なんじゃないかとさえ思えてくる。
俺を攻撃することによって確立される訳デスか?
その腐ったアイデンティティーってヤツは。

けど多勢に無勢ってのはちょっと・・・。
腐り過ぎてねぇか?

ああ、勝ち目なくして完膚無きまでに叩きのめそうっつー・・・。
アレ(パラノイア)的な?



「ぐっ!・・・は」

空き教室に入るといきなり腹に拳が埋まった。
つかなに。
この久しぶりな感じ。
このフラッシュバック。

問答無用の暴力が、アル中クソ親父を思い出させる。
だが。
親父の拳よりゃ随分と軽いそれにいつの間にか防御率上がって・・・ってうるせぇんだよ!!
なんでお前に比較優位、見いだされなきゃなんねんだっつの!

親父の幻影を振り払い、俺はヤツらに向き合い答えた。

「少しは容赦してね、先輩」

「っ、うるせぇ!」

背中に入った一撃に、一瞬呼吸が止まった。
床に膝を着くとすかさず入る数人の蹴り。

オィオィ何連コンボ繰り出すつもり?
それはさすがの俺も・・・キツいっつーか。
HPガッツリつか。


「お前生意気に風紀取り締まってんだろ?
だったら手出し出来ねぇよな?」

前髪を掴まれ無理やり顔を上げられる。

てかその汚ねぇ面、あんまり近づけないでくれませんかね?

「手出しはしねぇけど口出しくらいはしてもイイだろ?
一人でタイマンも張れねぇ臆病者の先輩達にさ」

「なっ・・・お前、自分の立場ってものがわかってないらしいな」

「立場なんざクソ食らえだし。
つかわかりたくもねぇし、雑魚が!」

「ほぅ・・・。
なら身体にわからせるしか、ねぇだろ!」

蹴りがアバラに食い込んだ。

「が・・・ハッ!」

胃液が上がってくる。
あー・・・ヤベ。
意識飛びそ。

けどまだ。
こんなところでくたばってなんか・・・いられねぇんだっつの!

俺は思いっきり睨みを効かせリーダー格のヤツを無言で威圧した。

来るなら来いよ。
こんなん屁でもねぇよ。
精神的に負ける気がしねぇ。

本能的になにか嗅ぎ取ったのか、そいつは一瞬身をすくませると、一歩後ずさった。


「あれ?
どうしたんデスか?
てかお前の面、一生忘れねぇからな。
覚悟、しとけよ。
俺しつけぇよ、先輩?」

「うっ、うるさい!
お前がメロに近づくから悪いんだ」

「メ、ロ・・・?」

は?
なんで今メロ?
近づくから、悪い・・・って。
なにこれ。
根本はメロに対する嫉妬なのかよ?

「お前が来なけりゃ・・・こんな・・・俺らはアイツの隣にいられたっ!!」

悲痛な叫びが教室内にこだました。

ああ。
そういう事。

こいつらの中のデイモスはレヴィアタン(嫉妬を司る悪魔)だっつー訳だ。

なんだよ。
7つの大罪って・・・。

か。

そっか。
ハハ・・・。


じゃあ。


じゃあ俺は・・・。
その上を行く8番目の罪を召喚してやるよ。
お望み通り。

そいつの名は、沈黙。
サイレンスデビル。

俺が永遠に黙っていればメロにくだらない負の感情が及ぶことはないって事だ。

成る程ね。
イイよ。
メロを守る為ならなんだって・・・。
こんなん、A Piece of cake(朝飯前)だろ。
あの時のチーズケーキムーンを思い出す。

な、メロ・・・。



「俺の命、欲しけりゃくれてやるよ」

「はっ!?
お前、なに言って・・・」


「だから俺はこの命棄ててやるっつってんだよ!!!」

窓がビリビリと共鳴した。
ああほら、もう。
大声出ちゃったじゃん。
ダっセェ。


「ホラ・・・さっさと殺せよ。
命やるよ。
・・・お前一生、人殺しの十字架背負って生きていく覚悟あんだろ?な?」


ジリジリと詰め寄る。
ああ、こんな時でも笑えるなんて。
俺、マジでイカれてっかも。

「お、お前っ!
頭、おかしいんじゃねぇのか?」

うん。
そうかもね。
てか代弁サンキュ。

「いらねぇの?
こんなチャンスもうないよ?」

「い、いらねぇよっ!」

「アハハ、マジ拒否るとか素でへこむし。
俺の命って価値ねぇのな」

フラフラとそいつらに近づくと、俺の周りだけ綺麗に丸く円が広がった。
逃げんなよ。
お前ら(狩り)得意じゃん。


「お、お前っ、バカじゃねぇの!?」

「付き合いきれねぇ、い、行こうぜ」


はは。
バカ過ぎて笑えるよね。
きっと今ここにナイフがあったら俺の心臓えぐり出して、こいつらに向かって投げつけてるだろうね。
もちろん、十字に開胸して、さ。
デイモスを召喚する為の、深紅の生け贄ってヤツ?
我は求め、訴えたり。

てかそれ、悪魔くんじゃん・・・。


バタバタと教室を出て行く足音を聞きながら、俺は遠ざかる意識の中でそんな事を思っていた。



ああ・・・。

パラノイアは俺。
だっつー。

オチ。



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