orphan*2=drug*(1/f*aube)=”緤”
□マトリョーシカ
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腕と腕が重なる。
背中に胸やら腹が当たる。
それは柔らかくも固くもなく、ずっと触れてるでもなく、呼吸にあわせて時々離れたりくっついたりを繰り返えしていた。
それが当たり前だというように。
床から伝わる冷たさが、より背中の輪郭をはっきりとさせた。
なんつーか……温かい。
頭上に煙草の煙がプカプカと浮いていた。マットの唇を形どって漂う紫煙は空間にベールをかけて二人だけの世界を作り出していくように見えた。
後ろからヒトに抱えられている現実が、真っ白な壁しか見えない狭い空間にいるからか時々焦点が合わなくなってクラクラする。まるで白昼夢を見ているようだ。
耳に吐息がかかる。
静かに響く声。
ただ体と体が触れているだけなのに体の中がバラバラになった。
マットの温度を感じて体はざわめき立っているのに心はゆっくりと静かになっていく気がした。
煙草の煙をぬって、ふわり、とマットの匂いがする。
それがどうも奇妙で、少々くすぐったい。どうしたらいいのか分からなくなってじわりと手に汗が滲んだ。
俺の手を掴んだマットは、何故か銃の撃ち方をレクチャーをしていた気がする。
今この状況じゃ、残念ながら頭には殆ど入ってこない。
背中や腕に意識が集中してしまって、それどころではない。
これが、ヒトの温度か。
さっきまでマットに触りたいとあんなに思った気持ちがどっかに飛んでいく。代わりに、少しでもマットから感じるものを逃さないように全神経がピリピリと張り詰めていた。
ちょっとしたマットのからかう仕草さえ、普段と違う気がした。
いや……違うのは俺の方か?
マットからの過度なスキンシップを毎回拒否しつつも、どこかでその時を待っている。嫌だと避けながら、それでいて期待しているんだろうか。
……理解できない。
分からない事など、もう何も残っちゃいないと思っていたのに。
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