*夢見心地


□いちご大福
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「苺ちゃーん」
『はいはい今行きます!』


「苺ちゃんまた彼氏が浮気したの!」
『だからさっさと別れろって言ったでしょ』


「苺ちゃん大福4つね」
『はーいただ今!』






自分はあまり好きではない苺という名前。
可愛いと言う人も居れば覚えやすいと言う人も居るのだが

ウチは大福屋で、人気なのが苺大福だから。そんな単純な理由から苺と命名された。




そんな私には悩みがある。





「苺ちゃん居やせんかねィ」


原因はこの人


「こんにちは沖田さん」



レジ横の試食用の大福をもぐもぐ頬張る真選組の切り込み隊長沖田さん。


「あ、居た居た」


「いくら試食でも食べすぎだと思うんですけど」



3つ目の大福に手を伸ばす彼に嫌味をポツリ。効果は期待できないけど。



「試食とは試しに食べるから試食というのである」


「はいはい」




毎日試食用の大福だけ食べて行くちょっと迷惑、だけど私の憧れの人。

だけど



「苺ちゃん…よく名前負けとか言われやせん?」


こんな素敵な誉め言葉を吐いてくれちゃう。


「大福10箱はいりまーす」

「げ」



沖田さんにしちゃ珍しいなぁ!

そんなオッサンの声が奥から聞こえた。



「そんなこと一言も言ってねーだろィ」


「隊長さんだもの 買えないワケないよね」


「も、もちろん」




ねえ土方コノヤロー

俺、初めてプライドというものを知りやした。アンタのプライドの高さも少しなら理解できる気がしやす。




「まぁ助かってますけどね」


「助かる?」




ピシッと指差す苺ちゃん


「こりゃすげーや」


俺の後ろに出来た長蛇の列
しかもやたらと女ばっか。


「大福 流行ってんのかィ?」


「沖田さんて天然?」


「さぁねィ」




黒みを帯びた笑み




や、やっぱり

(かっこいい…)




「ご馳走さん」


手についた粉を私のエプロンの裾で拭いた


「このエプロンもう洗えないわ」




ドキドキと大きく鳴る心臓



「…名前負け、か」




明日の大福にはタバスコ入れといてやろう、ひそかに苺は決意したのだった。








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