★SHORT★

□憧れの背中
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ぽすっ





薄いカーディガンを羽織ったその背に自分の背を投げてみた。





「んー?何、矢口?」

「んーん。何でもないよー。」

「そっか?ならええんやけど。」





ハロモニの台本をペラペラ捲りながら裕ちゃんは気にした風もなくオイラに答えてくれる。

いくらちっちゃいオイラといえど、今のは結構な衝撃があったと思うんだけどな。



裕ちゃんの背中は何時だって温かい。

大きくて、広いその背中は誰もが頼りとしている。

オイラの憧れだ。

いつか彼女のような頼り甲斐のある背中を、自分も後輩達に見せる事が出来るんだろうか?

・・・・ちょっとだけ、不安。





「ねぇ裕ちゃん。」

「何やー?」

「オイラさ、裕ちゃんみたいになれるかな?」

「え、何。あたしみたいになりたいんか?」





訝しげに裕ちゃんが振り返ったのが背中越しに分かった。

別にオイラ、変なことは言ってないぞ。





「あんたはあんたでええと思うけど・・
・。」

「オイラは裕ちゃんみたいに頼れる背中になりたい。」

「頼れる背中ぁ?・・・あたしそんな背中してるんか?」

「うん。すっごいカッコイイ背中してる。」

「・・・・・・・へぇ、知らんかった。」





ほー、とか、へぇ〜なんて呑気に言ってる。

ちょっとぐらい自覚しなよ。



むぅっとしてると、裕ちゃんが不意に微笑った。

何か苦笑って感じの笑い方。





「ならんでええよ。アタシに。」

「・・・何で?」

「矢口は矢口やんか。アタシと同じ背中なんてせんでもええんやって。」

 
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