拍手集

□Happy Birthday!!
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今日こそは気付いてもらえたら……




『マネージャーってこんなにも疲れる仕事とは思わなかったよ…』




現在私は、部室のソファーに伏せている。

テニス部のマネージャーをしている私は、今日はじめてそのことを知った。


聖ルドルフといえば、選手でもありマネージャーでもある観月はじめという奴がいる。


奴がマネージャーなかぎり、私の仕事はないのと同じ。全てこなしてしまうのです…。


でも、


今日は観月の誕生日。誕生日ぐらいは、自分の好きなことを優先して取り組んでほしい。


私からの、ささやかなプレゼントでもある…





「今日はずいぶんと走り回ってましたね。」


『ん、まーね。観月もコートの中で走り回ってたね。久しぶりなんじゃないの?』


「んふっ、そーですね。どっかの誰かさんのおかげで、自分のデータもとれましたね。」




そっか、普段は部員のテニスを見てるもんね。

どんだけ、働いてんだか…



『そっか、それはよかったね。』




疲れすぎて、素っ気ない返事しかできなかった。


そんな私を見て、観月は気をきかせてくれたのか部室をでていった。




アイツ、また仕事すんだ…きっと疲れ知らずなんだ。



今日だけは、マネージャーの仕事、私に頼んでくれてもよかったのに…




頼りないのかな…




重い瞼を閉じると同時に、一筋の涙が頬を伝っていた。









―――…

ガサゴソと音がしたから、目を覚ましてみればぼやけた視界の中に観月がいた。



「起こしてしまいましたか…」


『ううん…今何時ぐらい?』


「7時半ぐらいですね」

『え!!!?』



部活とっくのとうに終わってんじゃん!



『なんで帰らなかったの?!部室の鍵おいてくれれば、あとで閉めてたのに…』


「流石に貴女ひとりおいて、帰るわけにも行かないでしょう。」




気持ちよさそうに寝ていましたから…、とつけたす。



ありがたいけど、それじゃ私が走り回った意味ないじゃん…


ふと自分の背中に違和感を感じたと思ったら、ジャージがかけられていた。

きっと観月のだろう。


これじゃ逆だよ…
観月のために頑張ったのに…




『観月…ごめん…』


「…なんで謝るのですか」


『私が頼りないから、観月休ませることできなかった…今日ぐらい、誕生日ぐらい私に任せてくれてもよかったのに…』




情けなさすぎて、涙がでるのを堪えた。


少しの沈黙のあと、




「そういえば、今日は僕の誕生日でしたね。」


『…へ』



かなりマヌケな声をだしてしまった…ていうか出るよ。


あの観月が、自分の誕生日を忘れてるなんか…!



「試合のことしか頭にないものですから」


『…』




観月らしい答えに、思わず顔が緩んでしまった。


ルドルフの勝利を誰よりも強く願ってるもんね。





「んー…そうですね…」



観月は、特徴のある髪を人差し指でくるくるまわしながら何か考え込みだした。




「今日は、僕の誕生日ですよね…では、何か貴女にしてもらわないと」


『無理にさせなくていいから。』


「もう少し、ここに居てくれませんか…?」


『…なんで?』


「んふっ、誕生日ぐらい言うこと聞いてくれてもいいんじゃないですか?」


『んー…別にいいけど…』




そのあと、30分ほど談笑して一緒に帰った。



結局観月に何もしてあげられなかった。



でも、観月がこの世に生まれてきてくれた特別な日に感謝だけはしないと。


誕生日おめでとう!








(てか、マジでなんでここに居てなんか言ったんだろう??もっと我儘になればいいのに。)



(んふ…特別な日を、好きな人と過ごしたいと思うのは当たり前でしょう??)







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