あなたは私の幼馴染。

 大事な大事な、ただ家が隣なだけな…幼なじみ、だったんだ。




 「なに、ぶすっとしてるの。」

 『…してない。』

 「可愛い顔が台無しだよ?」

 『可愛くない!!もう!精ちゃんほっといて!』

 「…」



 今、あたしは幼なじみで1個上の精ちゃんこと幸村精市と帰宅中。

 あたしも精ちゃんもテニス部に入っている。…精ちゃんはもう引退したけどね。

 全国大会も終わり、切原がやっと部長らしくなってきた冬…。



 最近の精ちゃんはなにかおかしい。

 なんでかわかんないけど、精ちゃんが男に見えるの。

 だから、あたしは精ちゃんの隣にいると緊張しちゃって…こんな可愛げのないことばっか言っちゃうんだ。

 

 「…ごめんね。」

 『なんで、謝るの?』
 
 「俺がお前になんかしたんだよね。だから、怒ってるんだろう?」



 違う、ちがう。
 
 精ちゃんはなにも悪くないよ。

 "だから、謝らないで。" そう言いたいのに。



 『そうだよ…精ちゃんのせいなんだから。精ちゃんなんか嫌い。』



 なんでかな。

 あたしの口からはそんな言葉しか出てこないようになってんの?

 ホント、可愛くもない。嫌な女だよね。



 「…そ、っか。」



 精ちゃんは眉をヘの字にさせて最後にまた"ごめんね"と言って家の中へ入った。

 いつもの笑顔で"ばいばい"じゃなくて"ごめんね"

 あたしの方が、ごめんなさい。

 素直になれなくてごめんなさい。



 精ちゃんが好きなの、ごめんなさい。




素直に、(自分らしく素直に)  


1話*終了



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