scene of FFY

□誇り高き魂
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この世に未練がある者たちは、霊界へ逝くことを躊躇う。

しかし、あいつは例外だった。















誇り高き
















地上の生きものは皆、生まれながらにして、それぞれに課せられた使命がある。

それは、その生命の始まりから終わりまで続く。

使命をまっとうすることこそが、この世に生命を与えられた者たちの一生、というものだ。





かつて、私は「人を運ぶ」使命があった。
山や森に囲まれたドマ王国と外界を繋ぐ、重要な橋渡し役を担っていた。

しかし、世の戦乱によってドマ鉄道は廃鉄となり、もはや走ることが不可能となってしまった。

そして、役目を失った私は、人々に必要とされなくなり、いつしか存在すら忘れさられてしまったのだ。





それから長い年月が経ち、私もいよいよ朽ち果てようとしていた時…。















『おや?貴方、まだ魂が宿っていますね。眠るには少々早いのではないですか?』

『…私は、もう不要な存在となったのだ。構わないでくれ…。』

『生きる屍ってことですか。命は大切になさってください。』

『使命をまっとうできずに残された私の気持ち、お前に何が分かるっ!?』

『さぁ。私には生前の記憶がないので、貴方の言う「使命」の大切さが分かりません。
ですが、少なくともここで浮遊している魂たちは、貴方と同じ、この世に未練がある者ばかりです。
自ら霊界へ逝く決心ができないでいるのですよ。』

『…記憶が、ない!?お前は一体…。』

『さて、私は何者だったんでしょうね?』





あれから、人を運んでいた私は、「魂を運ぶ」という使命を見いだした。

私がもう一度走る気力を取り戻すことができたのは、あいつのお陰だ。

だから、私はあの時、あいつに協力した。















『…魔列車さん。彼らを逃がさないでください。』

『おぬし…。』















私のように、己の存在価値を見いだせずにいたお前は、今の状況が耐えられなかったのだろう。

自分が何者かも分からぬまま、永久ともいえるこの時を過ごすのは、確かに酷なことだ。

命に終わりがあっても、魂に終わりはないから。




















だが、忘れないでいてほしい。

お前が居てくれたことで、救われた者がここにいたこと、

どうか、忘れないでいてほしい。


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お前が救った魂、ここに一つ

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≫あとがき

魔列車さんVer.です!『名もなき魂』と対になっています。
私のイメージでは、魔列車さんは真面目で実直な方です。お堅いところがイイ♪

幽霊さんは自分を役立たずだと思い込んでいましたが、魔列車さんは実は密かに感謝していたのです。プライド高いので口に出して伝えられなかったのですね。
カワイイお方!


ご愛読ありがとうございました。
(2009/10/15)


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