『マッシュよ。ティナには明るく振る舞うよう、なるべく気にかけてくれ。』
『どうしたんだい?』
『彼女は長い間、意識を抑え付けられていたから、感情の表現がうまくできないでいるんだ。
人の感情に戸惑って、いつも思い悩んでしまう。』
『でも、そうしたのは帝国のやつらだ!ティナのせいじゃない。』
『そうだ。紛れも無く、帝国の"人間"だ。
それに気付いて、人間に不信感を覚えるかもしれない。
いいか、ティナは人間だが、幻獣でもある。
彼女には、人間を畏れるものだと思ってほしくないんだ。』
『…幻獣と人間のハーフ…か。
あぁ、そうだな。分かったよ、兄貴。』
『本当は俺がずっと傍にいてやりたいが…。
こんな時、老若男女問わずモテる国王の身は辛いな。ふぅ…』
『……(せっかく良いこと言ってたのに。最後は余計だぜ、兄貴…)』
One Year
-for Mash-
「お絵かき好きな女の子と老人?どこの家族かしら?たいていの家庭にはいますからねぇ。」
…あ、まぁ、確かに。
「女剣士とドロボウ(っぽい)男?
なに?あんた、おたずね者でも捜してんのかい?」
ぉ、おたずね者!?…いや、どっちもある意味正解か…?
「顔に傷のある男か、犬を連れた黒装束の男?
そりゃどっかの大道芸人たちかい?」
う〜ん。こっちもある意味正解…?(戦闘法的に)
「はて?ほしにくと刀を持った上半身裸のサムライ少年じゃと?
よぅ聞こえんの〜。」
あー…、ダメだ。聞く相手を間違えた。
兄貴は、…大丈夫な気がする。
フィガロの王が亡くなったと分かりゃ、きっと大ニュースになるだろうし。
…あとは、…ティナ。
本人の意思がなかったとはいえ、帝国軍だったんだ。
顔を知っている者がいれば何されるか分からない。
もし、蔑まされたら?
もし、また利用されたら?
彼女はまた、独りで悩み苦しむ…
兄貴たちと共に過ごしていくうちに、ティナも表情が豊かになってきたんだ。
控えめだけど、笑ったり、怒ったり、泣いたり。
せっかくここまで来たのに、台なしにしてたまるか!
誰かが傍にいてやらなきゃ。
あの時、そう兄貴が言ってた通り……
「おい!見たかよ、この新聞!」
「ああ、モブリズの壊滅だろ?
ひでぇ話だよ。」
モブリズの…壊滅!?
「なぁ、その新聞見せてくれないか。」
「あ?あぁ、いいぜ。やるよ。」
ニュースペーパーか…。
こんな荒れ果てちまっても、世界は機能しているんだな。
…人は弱くなんかねぇよ。
========速 報========
裁きの光によりモブリズ壊滅!
かの天変地異以来の大事件勃発!
沈黙を続けていた大魔導士が動き出した!?
驚異的な力の犠牲となったモブリズは現在――
======================
裁きの光…!?
三鬪神を解放した時の、あの力か!
ということは、あの塔のてっぺんにあいつが……
なぁ、道化師…
そんな高けーとこで何を見てるんだよ。
あんま上ばっか見てると、足元掬われるぜ!
お前が見下している"人間"にな!!
------------------
必ずお前を止めてみせる!
------------------