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□One Year -for Cayenne-
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「ござる!!」

「ガウ殿!?無事でござったか!」

「ガゥ〜!おれ、げんき!ござる、ケガないか…?」

「拙者も大丈夫でござるよ。きっと、皆も無事だ。」

「…ガウまけた。ウヒョウヒョにまけた…。」

「ガウ殿のせいではない。仕方なかったのでござる。力が強大すぎた…。」

「…ガウ!つよくなる!
ござる、ガウかえる!もーっといっぱいつよくなって、ウヒョウョたおす!ガウガウ〜!」

「ぬ!?ガウ殿!どこへ行くでござるかー!」

「ガウゥーつよくなるーーッ――…(テッテケテー)」

「…行ってしまった。きっと獣ヶ原だろう。後にまた迎えに行くとしよう。
それより、――」














One Year
-for Cayenne-
















―モブリズ壊滅―



…モブリズ。
重傷を負った兵士がいた村だ。
確か、マランダに恋人を残していると言っておった…。


"残して"


…なぜかその言葉が引っ掛かった。

普通なら、裁きの光の犠牲になった彼の方を心配するところなのだが、娘の方が気がかりで、こうしてマランダまでやって来てしまった。


どこかが、自分と重なってみえて仕方なかったのだ。










「こんにちは。あなた、郵便屋さん?」

「あ、いや、そのっ…。
モブリズの件を存じではいないだろうか。し、知り合いがいるでござるよ!」

「まぁ!あなたもモブリズに大切な人が?
モブリズの村、大変なことになりましたわねぇ。」

おかしい。
モブリズの事件を知っていて、この落ち着き…、一体…。

「でも…、大丈夫ですよ。」







「あの人は…無事だわ。
きっと、…伝書鳩が遅れているだけ…。そう…、そうよ。地形が変わってしまったもの。
うふふ。…すぐいつものように手紙をくれるわ…」










!!



この娘…



……瞳が…



なにも… 写して… いない…










代わりに、娘の瞳には孤独が写っていた…。

真っ暗な、真っ暗な、…孤独。

それは、愛する人に先を逝かれた…、置いていかれた者の闇。



娘は、兵士の死を悟っている…!



なぜ、突然娘が気になったのか。
彼女の瞳を見て、分かった。

拙者にも、覚えがある。
この瞳を、拙者も知っている。

ミナとシュンを失った時の、



"残された"者の瞳……




















「よし、ここなら…」


ゾゾ山の奥地。
ここなら誰も来まい。

そして、
紙と、ペンと、…造花と。

準備はできた。










“愛する ローラへ”










しかし、本当にこれで…良いのだろうか…

拙者が今しようとしていることは、本当に正しいのだろうか…

だが、拙者にできることが他に思い浮かばぬ。
彼の代わりに手紙と造花を送ることで、元気づけるつもりだったが……



…まさか、逆に足止めしていたことになろうとは。
彼女の足を引っ張っていたのは、拙者自身だったとは。















その事に気付くのは、もう少し先の話……




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放っておけない瞳

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