「ござる!!」
「ガウ殿!?無事でござったか!」
「ガゥ〜!おれ、げんき!ござる、ケガないか…?」
「拙者も大丈夫でござるよ。きっと、皆も無事だ。」
「…ガウまけた。ウヒョウヒョにまけた…。」
「ガウ殿のせいではない。仕方なかったのでござる。力が強大すぎた…。」
「…ガウ!つよくなる!
ござる、ガウかえる!もーっといっぱいつよくなって、ウヒョウョたおす!ガウガウ〜!」
「ぬ!?ガウ殿!どこへ行くでござるかー!」
「ガウゥーつよくなるーーッ――…(テッテケテー)」
「…行ってしまった。きっと獣ヶ原だろう。後にまた迎えに行くとしよう。
それより、――」
One Year
-for Cayenne-
―モブリズ壊滅―
…モブリズ。
重傷を負った兵士がいた村だ。
確か、マランダに恋人を残していると言っておった…。
"残して"
…なぜかその言葉が引っ掛かった。
普通なら、裁きの光の犠牲になった彼の方を心配するところなのだが、娘の方が気がかりで、こうしてマランダまでやって来てしまった。
どこかが、自分と重なってみえて仕方なかったのだ。
「こんにちは。あなた、郵便屋さん?」
「あ、いや、そのっ…。
モブリズの件を存じではいないだろうか。し、知り合いがいるでござるよ!」
「まぁ!あなたもモブリズに大切な人が?
モブリズの村、大変なことになりましたわねぇ。」
おかしい。
モブリズの事件を知っていて、この落ち着き…、一体…。
「でも…、大丈夫ですよ。」
?
「あの人は…無事だわ。
きっと、…伝書鳩が遅れているだけ…。そう…、そうよ。地形が変わってしまったもの。
うふふ。…すぐいつものように手紙をくれるわ…」
!!
この娘…
……瞳が…
なにも… 写して… いない…
代わりに、娘の瞳には孤独が写っていた…。
真っ暗な、真っ暗な、…孤独。
それは、愛する人に先を逝かれた…、置いていかれた者の闇。
娘は、兵士の死を悟っている…!
なぜ、突然娘が気になったのか。
彼女の瞳を見て、分かった。
拙者にも、覚えがある。
この瞳を、拙者も知っている。
ミナとシュンを失った時の、
"残された"者の瞳……
「よし、ここなら…」
ゾゾ山の奥地。
ここなら誰も来まい。
そして、
紙と、ペンと、…造花と。
準備はできた。
“愛する ローラへ”
しかし、本当にこれで…良いのだろうか…
拙者が今しようとしていることは、本当に正しいのだろうか…
だが、拙者にできることが他に思い浮かばぬ。
彼の代わりに手紙と造花を送ることで、元気づけるつもりだったが……
…まさか、逆に足止めしていたことになろうとは。
彼女の足を引っ張っていたのは、拙者自身だったとは。
その事に気付くのは、もう少し先の話……
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放っておけない瞳
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