二次創作

□例えばこんな世界
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封印戦争と呼称されることになる戦いから一月、クロガネのクルーやリ・テクのメンバー、ラ・ギアスの者達など、軍属でない民間からの協力者という立場になる者達が鋼龍戦隊から離れ、各々の場所へと戻っていた。
「すまんな、本来なら客人である君に雑用をやらせてしまって」
「いえ、気にしないで下さい。私が好きでしていることですから」
南極のベースに戻ったリ・テクのメンバーの中に一人、ラ・ギアスに戻らずに地上に残ったリゼラードがクリフォードにそう返す。
戦いの後再び姿を消した兄−シュウの動向を地上から探るという目的と、この先どれだけ一緒にいられるか解らない恋人と共に過ごしたいという気持ちもある。
「リゼ、ココア入れたよ」
「あ、ああ、ありがとう」
湯気をたてるマグカップを受け取り口に運ぶ。
大分濃いそれに噎せそうになりながらも気力で止まり、笑顔を返すリゼラードにクリフォードが同情の眼差しを送る。
「あと、悪いんだけどアニキと買い出しに行ってくれないかな?」
「構わないが、何か足りなかったか?」
ある程度の物資は補給されていた筈だし、ルイーナの出現と破滅の王との戦いにより、リ・テクノロジーベースは一部の居住区域以外が使用不能になっている。
不思議に思ったリゼラードが首を傾げると違う違うと手を振られた。
「物資が足りなかったとかそう言うのじゃないの。ちょっとした嗜好品、みたいなもの?」
「いや、聞かれても…ジョッシュは良いって言ったのか?」
「うん、アニキはもう出発できるように待たせてるから」
「早いな…」
初めから断る選択肢はなかったようだと苦笑しつつ、もちろん断るつもりもなかったリゼラードは濃口ココアを一気に飲み干した。
「コホッ、じゃあ、行ってくる」
流石に喉に絡む甘さに軽く空咳をし、リゼラードは愛機を格納してある場所へと向かったのであった。




「悪いな、付き合わせて」
「私と君の仲だろう?気にするな」
「でも今回は殆ど娯楽のためだからな…」
「リアナもラキに色々知ってほしいんだろう。そういう一見役に立たなそうな事でも情動を豊かにするだろうし、いいんじゃないか?」
「そういうものか…?」
真面目に悩むジョシュアに苦笑を返す。
現在二人は頼まれたものを買い込み、太平洋上をリゼラードの愛機、セティスレイドで南下中である。
クロスゲートを開き、破滅の王を世界に現出させる可能性のあるシステムであるシュンパティア及びレース・アルカーナの搭載されているエールシュヴァリアー、ブランシュネージュ及び各々のNVユニット、それにフォルテギガスとリ・テクの機体と構造の似ているファービュラリスはその危険性から連邦軍に接収されてしまっている。
ギリアムの「悪いようにはしない」という言葉の通り解体はされてはいないが、今のところ使える機体はリゼラードの機体だけである。
大量の物資ならば補給船から仕入れることができるが、細々としたものは流石になく、機動力があり、各地を移動する許可をもぎ取ってあるリゼラードが買い出しに出ることも多い。
「それに、もう少ししたらジョッシュ達はクロスゲートの調査団に入るんだろう?私も何時までも地上にいられるか解らないし、こうして二人きりで居られることに感謝しているんだ。気を利かせてくれるリムにも、ね」
小さく笑むリゼラードにジョシュアは僅かに目を見開く。
そしてふっと微笑みを浮かべた。
「…そうだな」
コックピットの中に柔らかな空気が流れる。
「お話のところすみません、リゼ、ジョッシュ。微細ですが重力震を感知したのですが…」
割り込みにくそうに、しかし放っておく訳にもいかずといった調子でリゼラードのファミリアであるカストルが声をかける。
ハッとして計器に目を向けた。
「次元交錯線に乱れが…何かが現れるのか…?いや、これは…っ!」
コンソールを操作していたリゼラードが驚愕の声を上げると同時、機体が大きく揺れる。
「どうした!?」
「外部からの干渉による時空間転移だ!何処かに跳ばされる…!駄目だ、離脱も間に合わない!」
機体の制御すら困難になり、下手に逆らってバラバラになるよりはと防御のために歪曲フィールドを展開し、引き寄せる力に行き先を委ねる。
強い力の干渉に機体の揺れがさらに激しくなった。
「ジョッシュ、サブシートのシートベルトをつけて掴まってくれ!」
「ああ!」
計器の警告音に掻き消されぬように大声で注意と承諾を交わしあい、後は舌を噛まぬように口を閉じる。
機体の上空にワームホールが開き、そこから降る光に包まれ、吸い込まれるように消えた。
こうしてリゼラードとジョシュアはこちらの時間では数時間の、二人にとっては長くなる失踪をしたのであった。

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