時癒しの雪童

□古の伝説編
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それは千年ほど昔の話。

漆黒の髪に真紅の眼差しの…ひとりの美しき者がこの大地へと足を踏み入れた。
その者は遥か彼方より旅を続けてきた…と、そう言った。

ふたりの幼くも優しき兄妹がいた。
兄妹はその者を手厚くもてなした。
兄がその者の傷ついた足に触れると…傷はたちまち癒えた。
妹がその者に夕餉を差し出し、その者がこれを食べるとたちまち体の疲れが取れた。

その者は七晩その家に泊まった。
その者は次第に心を開き…言った。
ある者達を探していると。

兄と妹は互いに顔を見合わせ、それから一羽の鴉を呼び寄せた。
その者は驚いた。
兄妹が呼び寄せた鴉には足が三本あったのだから。

「この鴉ならば君の探す者達のところまで導いてくれるだろう」と兄は言った。

「この鴉ならば君の求める者達のところまで知らせてくれるだろう」と妹は言った。

その者は礼を言い兄妹の元を去った。








それからどれくらいの時が過ぎただろうか…。
妹が隣村の大きな家に輿入れが決まった頃だった。

白の少女が現れた。

兄妹は少女を手厚くもてなした。
兄が少女の傷ついた足に触れると…傷はたちまち癒えた。
妹が少女に夕餉を差し出し、少女がこれを食べるとたちまち体の疲れが取れたと。

少女は七晩その家に泊まった。
少女は次第に心を開き…言った。
ある者を探していると。

兄妹は懐かしさを覚えた。

「知りませんか」と、その白の少女は言った。

「知っている」と兄は答えた。
「その者はいった」と妹は答えた。

「いってしまったの?」と少女が尋ねると、「いった」と兄妹が答えた。

少女がぽろりと涙を一粒落とした。

兄と妹は互いに顔を見合わせ、それから一羽の鴉を呼び寄せた。
少女は驚いた。
兄妹が呼び寄せた鴉には足が三本あったのだから。

「この鴉ならば君の探す者のところまで導いてくれるだろう」と兄は言った。

「この鴉ならば君の求める者のところまで知らせてくれるだろう」と妹は言った。

少女は礼を言い兄妹の元を去った。


一粒の涙を遺して。

一粒の涙は透明な珠となって兄妹から…子へ…孫へ…と受け継がれた。

[2]

それは千年程前の話。
『時』の某ジャンルと(大)混合中。
混ぜるな危険!ってやつです。
[2011.1.12]

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