□胎内回帰(前章)
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―僕達は母の顔すら知らない





机と寝台、それに箪笥と最低限の必需品しか置かれていない、凡そ生活感のない部屋。

その部屋の主人は寝床から起き上がると、おもむろに猫のようにのびをする。


首を二、三度左右に鳴らし、寝台から軽やかに飛び降りる。


その際、昨日一晩中読み更けていた本を踏み付け、思いっきり顔からダイブしてしまった。



「っ痛〜〜〜〜〜っ!!……何しやがる!このすっ!?……」



危ない危ない。
思わず素に戻ってしまうところだったと慌てて口を塞ぐ。


赤くなった鼻を押さえ、その原因となった本を掴み上げた。



冊子綴りの朝葱色のそれは、だいぶ古いものらしく所々痛んでいる。

特に表紙は何度も手に取ったのか、字が擦れ消えかけていた。


なんとか読み取ってみるとそこには




『閻魔の日記』


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