□初雪(妹太)
1ページ/4ページ


筆を持つ手を止めて、四角く切り取られた窓の外に目をやる。

朝方から日の光を覆い隠すように広がる鈍色の雲は更に重くなり、今にも一雨降りそうな雰囲気だ。



―こんな日は仕事もはかどらないな。



終わりそうにない書類の山と窓の外を交互に見比べ、思い立ったように筆を置きその場を飛び出した。


冷たい廊下は足の裏から熱を奪ってゆく。
が、それすらも気にならないほどに僕の心は高揚していた。



ただ彼に会いたい一心で……



真っすぐ伸びた廊下の角を曲がると、探していた青ジャージが目に飛び込んできた。


速度を緩め、縁側に腰掛ける太子にゆっくりと近づく。

すると、声を掛けるよりも先に太子が気付いた。


「おぉ、妹子じゃん!って、今は仕事してる時間だろ?サボりなんて上に言い付けてやるぞ」

「……太子もでしょう。馬子様に言い付けますよ、馬子キッスで凝らしめて下さいって」


冗談に冗談で返すと、「アレはやだなぁ〜」と苦笑いを浮かべ笑った。



「まぁ、こんな天気じゃ仕事なんてはかどらないだろ?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ