血と刀と姫と・・・

□血と姫と刀と・・・
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第零滴 プロローグ

「・・・・はぁ。」
銀色の景色の中、無彩色の世界に異質なものがあった。
「寒い・・・。」
寒さで微かに震えている、一人の少女。
「キミ、ここは危ないよ?」
と、その目の前に突如現れた、一人の青年。

手を引かれて連れて行かれたのは、暖炉の中に勢いよく燃えている炎で暖められている山小屋だった。
「寒くない?」
「うん・・・。」
少女は両手を擦り合わせながら答えた。

微かな異音。
「・・・・・・・。」
「っ!なんで・・・・。」
青年の首にかぶり付いている、少女。
「だって・・・。」
青年の首から牙を外して、半身を起こす少女。
「だって私が、吸血鬼だから。」
血で汚れた口元に浮かんだのは、微笑み。
「大丈夫、あなたは殺さないから・・・。」
その微笑を浮かべたまま、
「けれど、僕になってもらう。」
しかし、青年は眠っていた。
「おやすみなさい。でも、貴方が起きた時、この子は何も覚えていないでしょうね・・・。」





「―――ラル、起きて。」
「・・・ん?時間かい?」
青年の言葉に何度も頷く少女。
「じゃあ、行こうか、メル。」
「うん。」
草原の上で寝そべっていた青年に手を差し伸べて起きるのを手伝う少女・メル。
「さて、仕事に行こうか。」
軽く首を回して、コリをほぐしながら、メルの手を引いて歩き出す青年・ラル。

今日も、二人の吸血鬼はいつも通り、沈みゆく夕日を背景にしている町に向かう。



―――・・・プロローグ終了
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