血と刀と姫と・・・

□血と姫と刀と・・・
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第壱滴 

黄金色に輝く満月を夜空に浮かべ、ネオンや高層建築の灯りが少ないビル街。
夜空を背景に、高層建築の屋上から屋上へと飛び移る人影。
「しつこい!」
「しつこく追いかけるのがこっちの仕事だからね。」
追いかけられているのは、短い黒髪の男性。
追いかけているのは、短い金髪と血色に輝く瞳の青年。
「そこまでだよ。」
長い金糸のような髪に、血色に輝く瞳の少女が、男性の前に立ちはだかる。
「隠れるのが苦手な、鬼さん。」
その手に握られているのは、無骨だが殺伐とした輝きを放つ、優美に弧を描く日本刀。
また、青年の両手に握られているのは、銀色に輝く自動式拳銃の銃と、スコープが付いている狙撃用のライフル。
「仲間がいたのかっ―――!!」
急ブレーキを掛ける男性。
「どけぇ!」
「どくのは、キミだよ?」
瞬間、一筋の鋭い銀閃が高層建築の屋上に煌いた。
「が、ぁ!?」
「ふっ―――。」
飛び散る鮮血と共に、軽い身のこなしで着地する少女。その口元には、淡い微笑み。
「悪く思わないでね。」
銃声はしなかった。消音装置のついたオートマチックが、薄い煙を出していた。
男性は、着弾したと同時に、砂になり、風に巻かれて散っていった。
その横で、日本刀を一振りして、刀身に付着した血糊を振り払う少女。
「おーい、メルー。ヘリに見つかるから、そろそろ退散するよ?」
「・・・うん。」
刀身を鞘に収め、青年に返事する、ワイシャツに赤いネクタイ黒いボックスプリーツスカートの少女・メル。
「お腹空いた・・・。」
「ははは・・・気持ちは、わかるけどね。」
軽く腹部を右手でさすりつつ、左手で、ワイシャツの上から締めている幅の広いベルトに日本刀を鞘ごと吊り下げるメルに、同じくワイシャツに黒い長ズボンの青年・ラルは、もう体力が限界らしく額が汗で少し濡れていた。

黄金に輝く満月の下、金髪と血色に輝く瞳の持ち主の二人は、街の中心部に聳え立つ高級マンションに向かって歩を進めた。
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