コラボ作品の部屋

□たまごとにわとり
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玉座に沈む魔王が身じろぎする。
 エルフを守るように左右に展開した仲間達の間に緊張が走る。

 黄色い目を開いた魔王が、瘴気を吐き出しながら口を開く。
 聞き覚えのある言葉の羅列。

「やっぱり駄目だ。下がれ! ロザリー!」
「いいえ! まだです!」

 エルフと魔王の間に割り込もうとする少年を、エルフは鋭い声で制した。状況も忘れてぽかんとエルフを見る少年には目もくれず、エルフは魔王を見つめ続けた。

「ピサロさま! ロザリーです。思い出して! あなたはデスピサロなんかじゃない!!」

 必死の訴え。
 ああ、自分に足りなかったものはきっとこれだ。
 恐怖に身がすくみ、ただ膝を抱えて泣いていた自分。誰かが助けてくれると、待っていれば恐怖の方からいなくなってくれると、心の中で信じてた。願ってた。
 そして少年は、大切なものを失ったのだ。

(戦わなくちゃ、いけなかったんだよな)

 ごめん、シンシア。
 おれ、弱虫で
 きみを守れなかった。

 少しは強くなったんだ。
 もう遅いかもしれない。
 でも、手遅れってことはないと思うんだ。


 魔を払う、天空の剣。
 選ばれし勇者の手にあるときだけ、本来の力を発揮する。
 切っ先を魔に向け、柄を握る手に意志の力を込める。

「戻ってこい! バカピサロ!!!」
「ピサロさま!!」



 祈りは、声は、届くだろうか。
 言葉は力を持ち、願いを叶える。
 祈りは、天に力を与え、
 天は、祈りに応えるだろう。

 人が人であり、神が神であるかぎり。



2010.8.17
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