コラボ作品の部屋
□たまごとにわとり
2ページ/2ページ
玉座に沈む魔王が身じろぎする。
エルフを守るように左右に展開した仲間達の間に緊張が走る。
黄色い目を開いた魔王が、瘴気を吐き出しながら口を開く。
聞き覚えのある言葉の羅列。
「やっぱり駄目だ。下がれ! ロザリー!」
「いいえ! まだです!」
エルフと魔王の間に割り込もうとする少年を、エルフは鋭い声で制した。状況も忘れてぽかんとエルフを見る少年には目もくれず、エルフは魔王を見つめ続けた。
「ピサロさま! ロザリーです。思い出して! あなたはデスピサロなんかじゃない!!」
必死の訴え。
ああ、自分に足りなかったものはきっとこれだ。
恐怖に身がすくみ、ただ膝を抱えて泣いていた自分。誰かが助けてくれると、待っていれば恐怖の方からいなくなってくれると、心の中で信じてた。願ってた。
そして少年は、大切なものを失ったのだ。
(戦わなくちゃ、いけなかったんだよな)
ごめん、シンシア。
おれ、弱虫で
きみを守れなかった。
少しは強くなったんだ。
もう遅いかもしれない。
でも、手遅れってことはないと思うんだ。
魔を払う、天空の剣。
選ばれし勇者の手にあるときだけ、本来の力を発揮する。
切っ先を魔に向け、柄を握る手に意志の力を込める。
「戻ってこい! バカピサロ!!!」
「ピサロさま!!」
祈りは、声は、届くだろうか。
言葉は力を持ち、願いを叶える。
祈りは、天に力を与え、
天は、祈りに応えるだろう。
人が人であり、神が神であるかぎり。
2010.8.17