クリアリ短編1

□クリフトの言い分
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「なんじゃ、聖職者にあるまじきあの軽薄な答え方は!」



誰もいなくなった教会の祭壇。

くどくどと雨あられのように降って来る小言を、なんとかやりすごそうとして目を閉じる。

鷲鼻に魔道師らしい秀でた広い額(といっても、額と頭の境界線は判別不明だ)を持つ老ブライは、憤懣やるかたないといった口調で叫んだ。

「徳のかけらも見当たらぬ立ち居振る舞い、まったく嘆かわしいと言ったらない。おぬしの馬鹿さかげんには付き合いきれんわ。

それで十年近くも修行を積んで来た、サントハイム城直属の神官だという自覚はあるのか!」

「し、仕方ないじゃありませんか」

わたしは弱々しく反論した。

「真剣に悩んでいる方に対してその場かぎりの嘘など、わたしには申し上げることは出来ません。

どんなに軽薄に聞こえようとも、わたしの思う真実はあの通りなのです。

つ、つまり……信仰者であろうとも、時にはどうしようもなく誰かを好きになることもあると……」

「ふん!」

ブライはあざ笑った。

「だからといってお前は想う相手に堂々と告白することも出来ず、部屋でひとり隠し撮り写真を眺めては、うじうじめそめそと悩みに沈んでおるだけではないか。

クリフト、お前は暗い!暗いんじゃ!

そういう思いを恋とは言わぬ。執着じゃ。気色の悪い根暗男の妄執じゃ」


がーーーーん!!!


痛恨の一撃。


500ポイントのダメージ、ものの見事に撃沈。


「未だ世間の荒波を知らぬ若輩者に対して、あ、あまりにも手厳しいお言葉っ……で、ですが」

わたしは滂沱たる涙を袖でごしごしと拭いた。

「このクリフト、たったいま目が醒めました。

確かに神への信心以上に深く想うお方だというのであれば、恋い慕うお方に対してもっと堂々と!熱烈に!正面から!この気持ちをぶつけねばなりません。

さればこのクリフト、今日より根暗は返上!

熱い情熱ほとばしる真夏の太陽のような男となって、必ずや愛しい姫様のお心をがっちりゲットしてみせます!」

「ゲ、ゲット?!ゲット?!!」

(よおーーーし、やるぞーーー!!!)

握りこぶしが熱くなり、瞳の中で炎がメラメラと燃え上がる。

そうだ!いつだって神様は背中を押してくれるだけ。

なにかを掴むため、望みを叶えるために大切なのは、自分の足で踏み出すこと。自分の腕を伸ばすこと。

そんなのわかってたことじゃないか!

「目標はたったひとつ。姫様の気高いハート!

このクリフト、必ずや手に入れてみせますーーっ!!!」

(ああ、生まれて初めての経験だけど………、

熱いって、熱いってなんだか気持ちいい!!)

両手を突き上げて叫ぶわたしの後ろで、ブライ老人が途方に暮れた顔で杖をくるりと回した。

「……よほど頭を強く打ったかのう……。少し冷やしておくか。


………ヒャド」
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