久しぶりの休日、ロックオンは刹那と地上に降りてきていた。用がとくにあるという訳ではなくただ、純粋に刹那との時間を楽しみたかったのだ。場所は民家から少し離れた場所。人通りも少なくあまりロックオンとの関係を知られたくない刹那にとっては絶好の場所と言えた。
寒いな……。ロックオンは息を吐きながらそう思った。白い雪が降り積もり、その茶色い髪も白く染まる。そして、はぁー…と手に息を吹きかけると自然と頬が赤みを増した。珍しく手袋を着けていない手を見て、ロックオンは顔を暗くし、その手をポケットに突っ込む。

「ニール。」

その時、自分の隣にいる刹那が本当の名前を呼び、ギュッと手を掴んできた。その手の冷たさにロックオンは驚くが、そのまま自分のポケットの中へと二つの手を押し込め、ニコッと刹那に微笑みを向ける。

「どうした?」

ロックオンは、いつものストールとは違い、赤いマフラーとコートを身に纏っている刹那の顔を見ずに返事を返す。刹那は頬を赤く染め、ロックオンのポケットの中で手を握り締める。 その行為に微笑みを浮かべ、刹那の手を取りだし、その甲に唇を寄せた。その洗練された行為に刹那は恥ずかしくなり思わず手をロックオンから遠ざけるがすぐに手を掴まれ、再びポケットに押し込まれた。

「冷たいな………。」
「もう十分に熱い……。」

刹那の耳まで真っ赤になった顔の彼の可愛さを見つけたロックオンはつい笑みが溢れてしまう。その笑みを見てか刹那は顔をごしごしと擦り始める。

「そんな事したって顔は赤いままだぞ。」
「やってみなければ分からない。」
「無理だって、ほら、逆に赤くなってる。」

 そういって、ロックオンは刹那の手を退かし、擦った事によって出来た跡をそっと指でなぞる。

「ほら、こんなに赤いぜ?全く、仕方ねぇな、お前は。」

 ロックオンは微笑を浮かべてその跡を舌で舐める。

「んっ。」
「……動くな。」

 そのざらざらした感触と小さな刺激の所為で刹那が少し動くとロックオンが声で刹那の動きを止めた。
黙って舐められる刹那に対して、ロックオンは思わず頬を緩めた。

「刹那。」
「……っ、なんだ?」
「………好き。」
「っ!!!」

顔が真っ赤になった刹那を見てロックオンはクスクスと小さく笑う。
 それを見て刹那は頬を膨らませながら、ロックオンのコートを思いきり引いた。

「お、おい!!」

 ロックオンが前屈みになったその瞬間に刹那の唇が軽く触れた。驚いて目を見張ると刹那はロックオンから手を離してスタスタと先に行ってしまっていた。
 その後を慌てて追い掛け、ひょいと顔を覗き込むと、刹那は顔を真っ赤にし、ロックオンの方を見ないようにしていた。その初初しい姿にロックオンが吹き出すと、馬鹿にされたと考えたのか、刹那がばっと振り返り、ロックオンを睨みつける。

「笑うな!」
「刹那が可愛いのが悪いんだ。」
「可愛くない!!」
「・・・・・・可愛いよ。」

 真剣な言葉に、刹那がぐっと押し黙り、静かに微笑んだ。その笑顔にロックオンは思わず刹那の身体をぎゅっと抱きしめくすくすと笑う。

「手はつめてぇのに身体はあったいんだな。」
「五月蠅い・・・・・。」
「子供体温?」
「っ!!五月蠅・・・・・・。」

 顔をばっと上げた瞬間に刹那の唇を奪い、静かに目を瞑る。それにつられて、刹那も目を瞑り、更に深い口づけを求めてきた。
 無意識であろうその行為に、ロックオンは自然と微笑み、その要求に応える。

「はっ・・・・・ん、ぅ。」
「刹那・・・・・・。」

 キスの合間に愛おしそうに名前を呼ばれて刹那はロックオンに甘えるようにキスを貪った。

「ん・・・・・・は、ぁ・・・・・・。」
「まだ、寒いか?」
「平気・・・・・・だ。」
「そっか、なら良いんだ。」

 そう言って、再び、ロックオンと雪が積もった道を歩き始める。さくさくと雪を踏む音が心地よく、ロックオンは目を瞑った。そのとき、刹那の手が離れてしまう。
 慌てて目を開けると、そこには刹那が地面に座り雪で何かを作っている刹那の姿が目に入る。

「何作ってるんだよ。」
「・・・・・・ハロ。」

 そう言って、刹那はロックオンの前に丸めただけの雪の塊を差し出した。その塊を見てロックオンは笑いを堪えることが出来ず思わず笑いこけた。
 それを見て、刹那は頬を膨らませ、プイッとロックオンの方とは別の方を向いてしまう。その拗ねた仕草を見て、ロックオンは笑いながら謝った。

「わ、わるかっ・・・・・・っ〜はは!!お前!!それでハロはねぇだろ!」

 いつまでも笑っているロックオンを見て、刹那はぺしっと雪の塊をロックオンに向かって投げる。

「うを!!刹那!」
「いつまでも笑っている方が悪い。」

 そう言って、刹那は、ロックオンに雪を投げつけることを続ける。すると、ロックオンも反撃というかの如く、刹那に雪の塊を投げ始めた。

「刹那、目標を駆逐する!」
「ロックオン!狙い撃つ!!」

 それぞれ、ガンダムで出るときの言葉を巫山戯ながら言い、雪を投げつける。そして、暫く経ったあと、体力が限界となったのか、二人はほぼ同時に雪の上に倒れた。

「あ〜・・・・・・つっかれた、あっちぃ・・・・・・。」

 ロックオンが手でぱたぱたと仰ぎながら火照った身体を冷ましている。

「・・・・・・。」

 刹那は無言でむくりと起きあがると、雪を払い落とし、コートをキッチリと着込む。その身だしなみを気にする真面目さにロックオンは苦笑いを溢した。

「刹那・・・・・・。」
「・・・・・・なんだ。」




「・・・・・・愛してる。」
「っ!!!知っている!!!」

 ロックオンは刹那の反応を見て、にやにやと笑った。そして立ち上がり、刹那の耳元で、そっと囁く。

「刹那の口から聞きたい。」
「・・・・・・っ。」

 刹那は困惑したような表情を浮かべ、ロックオンを見上げる。そして、視線が合うと、ばっと俯く。

「・・・・・・すきだ。」

 あまりに小さな声だったが、ロックオンにはしっかり届き、思わず顔がにやけた。それを誤魔化すように刹那の頭をグシャグシャと撫でる。

(これくらい許されるだろう?神様とやら)

 ロックオンはそう思いつつ、刹那の手を取る。刹那もその手をギュッと握り替えし、顔を下に向けた。

「刹那。」
「なんだ。」

 刹那の素っ気ない返事だが、暖かみのある響き、ロックオンの頬が緩んだ。そして、思っていた事を口にする。

「メリークリスマス。」
「・・・・・・。」

 刹那からの返事は無かったが、変わりに一つの物を手渡され、ロックオンは目を見開く。その一つの物とは、マフラーだった。

「めりー・・・・・・くりすます。」

 予想外の出来事に、ロックオンは狼狽えると刹那がおかしそうにクスクスと笑う。その久しぶりの笑顔を見て、ロックオンも微笑んだ。
 そんな二人を白い雪が包み込み、まるで祝福しているかのように、夕刻に近づいている民家の照明がチカチカと光り輝いていた。








更新日2008/12/24
後書き
クリスマス・・・・・・二人のいちゃこら小説です。甘いですか?砂糖になってますか?大丈夫ですか??そう言えばこの二人ってあんまりかいたことないかなって思ったりしてます。読むのは好きなんですけどね〜。


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