侍Trip

□肆幕
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こんな事が信じられるのだろうか。

目の前の少年は白い化け物をいともたやすく切り捨てる。

時折なびく銀髪。細く歪められた赤い眼。

どれも力強くて、「恐怖」を感じさせる。


「貴様…死神カ!」

「あー…当たり」

「ナルホド。道理デ美味ソウナ魂ヲシテイルンダナ」


ニタァ、と下品な笑みを浮かばせる化け物。

舌なめずりをしてとても美味しそうな物を見る目で少年を見る。


「ソレニ、今マデ喰ッテキタ死神ヨリモ美味ソウダ」

「ほう…今まで何人の死神を喰らった?」

「五人ハ喰ッタナァ」


「あれはどれも美味かった」と顔をにやつかせながら少年の質問に答える。

それよりも、先程からこの化け物の口から出る「死神」とは何なのか。

どこからどう見ても普通の少年だ。

ただ身軽な動き、刀さばき等は只の少年とは言い難い。

言うなれば武士だろう。太刀筋は何処の型ではないにしろ素晴らしい刀さばきだ。


「ま、どうせお前は小物だろうし。ちゃっちゃと済ませようか?」

「ハッ!今マデノ死神モ同ジ事ヲ言ッテ俺ニ喰ワレテイッタンダ!」


そう化け物が言い終ると化け物は少年に飛び掛る。


「危ないっ!」


咄嗟に意識が戻った。少年が化け物にやられてしまう。そう思い体を動かそうとした。

けど、体が動かない。


何故?先程とは違い体が動こうとしたのに!


ふと、少年を見ると眉を潜め赤い目を歪めて言い放った。


「危ないから人間は下がってろ」

「君も危ないですよ?!」


私の言葉を聞き取れた筈だが少年は私の言葉を聞き入れず化け物へと向かった。

その時、少年の表情が変わった気がした。

まるで私と同じ様な…



「破道の三十一、赤火砲」



 
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