OTNER*NOVEL

□01.凍える夜
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例えば帰り道。



テオ様のところで夕飯に呼ばれて、当たり障りのない会話をしてから帰る道すがら。





何も考えず、ボーっと歩いてるとふと、何処かの家から漏れる明かりと笑い声が耳に届く。




その時は何も感じないし、何かに囚われることはないけれど。



−−−・・・そんな日に限って夜、一人悪夢に魘される。






あぁ、俺の奪った命や未来や、当たり前の彼等の日常はもう、この世界にはないんだと。

あの家から漏れでていたような温もりも笑顔も何もかも、残されたものは何ひとつないのだと。

突然。


虚無の心は理解する。


そして訪れる悪夢と孤独と、……―――深い闇。




『お前は強い子だよ、テッド。』


いつか聞いた彼方の記憶。

頭を撫でられ笑顔で紡がれた温かい思い出。


でも。

(俺は……強くなんかないんだよ、じぃちゃん。)


だから今まで生きてきたし、これからもずっと生きていくんだと思う。


強かったら逃げてなんかいない。


立ち向かって歯向かって、掴み取る『生』ならまだ意味がある。


けど………―――――――




俺の『生』には意味がないんだ。



『生かされてる』この世の中なんかに意味はない。


与えられる温かさや優しさや泣きたくなる様な幸せなんて、俺にはもう訪れないんだから。




(訪れちゃ、いけないんだから。)




悪夢のせいで汗ばんだ身体を自分の両腕できつく抱きしめる。



「……さみぃ。」


ぽつりと呟いた言葉が思いのほか心に響いてぞっとする。





「さみぃよ、すごく。」




タスケテ、と呟く言葉は音になることなく霧散しはじけた。



意味なんてない。



俺の『生』に意味なんてないんだ。



暗闇の中、タダ一つ輝く月さえも俺を温めてくれることはなかった。







END.

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