FFZ*NOVEL

□05.消毒液と傷口
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「アンタさぁ、いい加減覚えろよ。」

リビングの床の上、仁王立ちした俺の前には正座して俯くザックスの姿。冷たく言い捨てた台詞に、ザックスは更にしゅんとしてうなだれた。

「はい。」

力無く頷く声。その姿と声が、まるで悪戯して怒られて落ち込んだ犬みたいで、ちょっと怒りすぎたかなぁと小さな罪悪感に胸を突き刺される。
知らず、ふぅと息をもらす。そんな小さな気配にもぴくりと反応を示す犬ことザックス。

「あのね。上から急にアンタ落っこちてきたら、焦るんだよ。」

「スミマセン。」

さっきみたいに頭ごなしに怒りつけず、ザックスに言い聞かせるように言葉を選ぶ。
元来口下手で素直じゃない俺は、正直に自分の気持ちを口にすることが出来なくて。
今回も例に漏れず、俺は伝えたいことが伝えきれずにいた。

でも。

うなだれてるザックスの姿を見てたらあまりにも可哀想になってきてしまって。

少しぐらい。ほんのちょっとだけ。
本当の気持ちを伝えてみてもいいかな、なんて思ってしまった。

「……無駄だって解ってはいるんだけどさ。」

そっぽを向いて溜息混じりに言葉を続ける。ここまで来ても素直じゃない自分に呆れつつ、まぁそれでもいっかと開き直る。

「何かあったらって…、オレだって、心配ぐらい…するんだから。」

例え不死身のソルジャーだと言われてようとも。

人間兵器と罵られていようとも。

自分から見たらザックスはただの人間で。
生身の、たった1人の大切な人で。
急に降ってこられたら、例え何ともないって分かっていても背筋にひやりとしたものが伝っていくのだ。

言ってしまってから恥ずかしくて、言葉を続けようにも何も思いつかずに俺は思わず黙り込んでしまった。
すると数秒の沈黙の後、俯いて正座していたザックスが急に立ち上がってその勢いのまま腕の中に抱き込まれる。

ギュッと、下手したら骨が折れてしまうんじゃないかってぐらいきつく抱き締められて、俺はそのいきなりの展開に目を見開いてしまう。びっくりした。

「ちょ、ザックス!?」

慌てて腕から出ようともがくけど、その腕はびくともしなくて。
自分だって毎日訓練して、それなりに鍛えているはずなのにこの違い。いささか自尊心を傷つけられつつ、尚も身をひねっているとこれまた急に、その腕を解かれて真正面から覗き込まれた。

噛みしめられた唇。しわが寄った眉と細められた目に心臓がはねる。

切なそうにしかめられたその表情の奥、揺れる瞳にあるそれは、涙?

「〜〜〜…!!クラウドッ愛してる!!!」

叫びと共に再び抱き締められたけど、今度は抵抗しなかった。少しだけ緩まったその腕の中、自分の腕もザックスの背中に回して。
小さく、彼の告白に頷いた。





(俺も、あいしてるよ。)





了。



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