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□05.脅しの基本は笑顔です
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「クラウド!!無事かぁあ!!?」
バタンッと大きな音がしたかと思うと、複数のドタバタという足音が近づいてくる。
時間は早朝、丁度リビングで朝食のベーコンを咀嚼していた俺は、うんざりした気持ちでそれを聞いていた。
(遂に来たか…。)
レノの部屋に転がり込んで早三日。行きも帰りも出来るだけ人目に付かないように出入りしていた筈だったけれど、どうやら変態の鼻は簡単には誤魔化せなかったようだ。
(よく保った方だよな、3日でもさ。)
何せ、以前頼った友人同期宅はその日の内に嗅ぎ当てられていたのだ。
溜め息を吐きながらフォークを机に置くのと、リビングのドアがけたたましく開くのはほぼ同時だった。
「クラウド!!やっと見つけた!」
「クラウド、相変わらず美しいな…。」
「お早うクラウド。早速で悪いが、あの赤毛は何処だ?なに、赤毛一匹消すなんて造作もない事。直ぐに済む。」
不穏な言葉が聞こえてきたがまずはスルーだ。
幸いレノは急な呼び出しがあるとかで少し前に出社していた。
当の本人は、朝早くの呼び出しに至極不機嫌そうだったが、この三人と鉢合わせしなかったのは不幸中の幸いというものだ。
と、言うよりも。
(誰か…俺の事リークしたな?)
今居る場所。タークス専用寮は、特定の人物しか入れないように管理が徹底されていた。それはソルジャーも例外ではなく。
俺の場合は、この寮に住んでいるレノと一緒に出入りさせてもらっているが、こいつ等の場合は違う。
入ることの出来ない寮内にいて、尚且つレノの部屋の鍵さえ開けられた、ということは即ち。
(仲介者の存在有りだ。)
「アンタ等、どうやって此処に?」
部屋を確認して回るセフィロス、俺の向かいに座り、持参したLOVELESSを読みふけるジェネシス、子犬のように俺にじゃれつくザックスの三人に問い掛ける。
すると、意外にもすぐにその問いに対する答えが返ってきた。
「あー、それ、セフィロスがツォンに交渉したからだぜ。」
「あぁ、タークス主任にか。確か次のタークスとの任務、セフィロスが出向くとか言っていた…な!」
「うぐぁ!!」
(英雄特権か!!)
背後から俺に抱き付きながら言うザックスと、そのザックスにLOVELESSをクリーンヒットさせながら淡々と言うジェネシス。
(セフィロス…嫌いな任務には梃子でも動かない事を逆手に取るなんて…!!)
心の中で舌打ちをする。そうか…レノに召集を掛けたのもその主任だ。タークスエース(自称)の命の危機を回避したという訳か。
(そりゃそうだよね。こんな訳わかんない事で死なれちゃ、堪ったもんじゃない。)
唯でさえ、タークスは人手が足りなくて多忙だと嘆いてたレノのことを思い出す。
(それでも、恨むからなタークス主任!)
俺はまだ見ぬツォンなる人物へ向けて、今密かに恨みを募らせた。
「赤毛は見当たらないな。」
溜息を付きながら、一通り家探しを終えたセフィロスがリビングに戻って来た。
「ふーん。大方ツォンの差し金だろ?」
こめかみを押さたザックスが興味なさそうにそう返すと、セフィロスは一つ息を付いて俺の隣に腰を下ろした。
「つまらん事をする。」
「正常な判断だろ。」
思わず、ボソリと呟いてしまった。けれど、その呟きに対する反応はなくて。
変わりに、いつもの如く始まる不毛な言い争い。
「だいたい、ジェネシスがクラウドに夜這いなんかするからこうなったんだぜ。」
「愛し合う者同士が成すべき営みだ。」
「だったら俺と成すべきだろう?」
「いやいや!だったら俺だって!!オーレー!!」
三人の応酬には慣れたつもりでいたが、久し振りに聞くとやはりげんなりする。
俺は一先ず、そのやりとりをBGMに朝食の残りに手を付けることにした。
折角レノが作ってくれたのだ。
すっかり冷めてしまったが美味しいと感じられるスクランブルエッグを口に運びつつこの後どうやってこの中から抜け出そうかを思案する。
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