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□05.脅しの基本は笑顔です
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(ザックス達に気付かれないようになんとか脱出出来ないかな。)

俺はジェネシスと言い合いをしているザックスの腕を見ながら脱出方法を思案する。
彼の腕は俺の方に回されたままで、それが外される気配はまるでなかった。

「喚くな子犬。」

ジェネシスが煩そうに手を振りながら呟く。

(それにはまずザックスの腕を外さないとなぁ。)

「子犬じゃないって何度も言わせ「ザックス、俺トイレ行きたい。」んな!あぁ、悪い。」

背後から回されていた腕を解き、ジェネシスの方へ詰め寄るザックス。
俺は食べ終わった皿をシンクに片付け、部屋を出る。
チラリと背後を伺うと、ザックスとジェネシスが掴み合う手前で睨み合っている。セフィロスはというと、時折2人の応酬に口を挟みながら、何処から出したのかカップにコーヒーを注いで優雅な仕草でそれを口にしていた。

「ふん。クラウドは既に俺の物だというのに憐れな。」

(…何?)

ドアを閉じる寸前聞こえてきた不穏な言葉に思わず足を止める。

「は?何言ってんのセフィロス。まさかアンタまでクラに夜這いを…!」

「ふん。そんな低俗なことはやらん。」

(この間、人の寝室に無断で侵入してきたのはどこのどいつだよ。)

思わず心の中で突っ込む。ジェネシスのようにあからさまにベッドの中に入ってイカガワシイコトに及ばないまでも、セフィロスだって俺が寝ている間に寝室に入り、頭やら顔やらをやたら触りまくり、終いにはキスの嵐を降らせていくことが度々ある。夜這いとまではいかないが、それだって充分同じ様なものじゃないかと思う。
セフィロスにしろジェネシスにしろ、身の危険を感じる、という点では俺の中で大差ない。
その点ザックスは意外に無害だ。普段ベタベタ触りまくる割に、それ以上の行動をされた試しがないのだから。
普段、犬だ単細胞だと罵られながらも、その実一番理性も常識も持ち合わせているのはこの男なんじゃないかと最近ようやく理解してきた。

…まあ、この三人の中では、という部類だからその認識にどれだけの信用性があるかは定かではないが。

しかしながら、セフィロスの言葉は不可思議極まりない。ベタベタするのもキスされるのも、セフィロスだけがしている訳ではない。ジェネシスだって事あるごとに仕掛けてくるし、セフィロスだってそれを見ているはずだ。(こうしてみると、俺がまるで誰にでもキスしてるみたいに思われるだろうが、断じて違う!)

今更キスのひとつやふたつで俺の物発言が出るのはおかしな話で。まぁ、そもそもこんな話が出ること事態がおかしいんだけれども。

(あー、頭イタ。)

もしかしたら、自分の知らない間に何かセフィロスにされたのだろうか?
全く見に覚えはないのだが、見に覚えが無くても何かがありそうな気にさせる雰囲気が彼にはあった。

(まさか、婚姻届偽造して英雄特権で無理やり認めさせたとかじゃないだろうな?)

馬鹿げた話だが、この男ならやりかねない。

「クラウドは、次の人事で俺の事務官になることが内定した。」

(…は?)

まるで予想していなかった言葉が耳に届く。

(じ、むかん?誰が…何だって?)

「従って、もうお前等に手出しはさせん。」

「ちょ、待てよ!クラウドはソルジャーになるって試験受けてんだぞ?」

なんで事務官なんだよ!と、ザックスの怒鳴る声が聞こえる。
かくいう俺はというと、その突然の展開に着いていけなくて部屋に舞い戻ることもせず扉の前で立ち尽くしていた。






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