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□*愛おしい君へ
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「ありがとう。」



暗い部屋に、柔らかい呟きが響く。

その言葉への返事はない。しかし、浮かんでいた笑みは更に深く、自身の顔に張り付いていた。



自室のベッドの上、上半身を起こした状態で、隣に眠る愛しく掛け替えのない存在にそっと手を伸ばして、その艶やかな金糸を緩く撫でる。


「オレ、お前に救われてばっかりだ。」


いつもいつも、お前の事情なんか関係ないってぐらいに激しく求めてしまって。互いに自由な時間はひたすら、それを共有したいと思うのはただのエゴだとわかっているのだけれど。


ここのところはずっと顕著に、その欲望を抑えられずにいる。


顔を見たい。声を聞きたい。笑顔がみたい。触れたい。キスしたい。その先も、もっと、もっと。



…おかげで今日は無理をさせてしまった。


疲労の影が見える顔に唇を寄せる。瞼の上にチュッ、と音を立てて口付けをした。




恥ずかしがり屋で、素直じゃなくて。だけどそんなとこがすごく好きで。

可愛い、なんて言ったら、真っ赤になって怒るんだろうな。…そんなとこも可愛いんだけどさ。

オレの我が儘も、とことん付き合ってくれる。散々悪態は吐くけど、一度も『嫌だ』なんて言ったことはない。気づいてるんだぜ、実は。
オレに対して、そうは見えなくとも実はとことん甘いお前のことが本当に愛おしい。
愛おしくて慈しみたくて仕様がないんだ。







オレは。





お前がオレにくれる安らぎに、見合うものを返せるかな?


隣で笑っていてくれるその笑顔に見合うだけの愛情を、これからずっと。出来れば一生を掛けて、お前に渡していくよ。














約束する。







だから、お前にはずっと、オレの傍に居続けて欲しいな…なんて。


「そうしてくれたら…嬉しいな。」


「…何を?」


ふと、独り言に返ってきた言葉に目を見開く。
起きてたのか、なんて彼の髪を撫でながら問いかけると、うん、と小さく頷く声が聞こえた。


「クラウドが、オレなしじゃ生きられないってなってくれたらなって話。」


「何それ…」


「毎晩奉仕するからさ?」


「馬鹿じゃないの…」


ふっと、緩く笑う表情にグッとくる。


(あ、オレこの表情好き。)


しばしその笑顔に見惚れていると、自分の頬に白く、男にしては細い腕が伸ばされてくる。


「そーゆうんじゃなくてさ、」


俺はこっちがいいな、なんて言いながら、顔を引き寄せられ、彼の唇へと誘われる。


「クラウド、それ反則……」


口付けを交わしながら息継ぎの合間にそう漏らせば、ゆるりと、今日一番の笑顔が向けられて。


(……ヤバ、止まらねぇ)


段々と深くなる口付けを交わしながら、頭の片隅ではその先の行為を思い描く。







甘い夜は、まだまだこれからのようだ。












◇愛おしいキミへ◇



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