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□*君の世界を壊して
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**ハリポタ鹿犬**


◇君の世界を壊して◇





ゆっくりと、髪を撫でる。

いつ触れてもすべらかで触り心地の良い、絹のようなそれを何度も何度も撫でながら、僕は少しだけ眉をひそめた。


(……許せない、な。)


目の前で眉を寄せ、身を堅くして眠りにつく彼の姿を眺めながら、少し前まで目の前に晒されていた幾多の傷が脳裏に蘇った。


不健康には見えないが白くきめ細かい肌に、赤黒く場所によっては紫色の斑点が辺りに散りばめられたソレを初めて目にした時は、我を忘れて怒り狂ってしまいそうになった。

長期休暇の度に目に付いていたソレは、回を重ねるごとに酷くなっていって。

その度に行き場のない憤りを有らん限りの自制心でもって制してきた。


…それも、長くは持たなかったけれど。



理不尽にも、許せないとお前に掴み掛かる僕のことを受け止めて。こんなことは些事だと強い瞳で見返すお前のことを眩しいと、そう思った。

名前の通り、強く輝く光。

その瞬きの一端に、自分の存在が在れたらと。


(お前を曇らせることしか出来ない存在から守りたいなんて…言ったら、ブン殴られるかな。)


俺は女じゃないと言って烈火の如く怒り狂うシリウスが脳裏に浮かんで苦笑する。

髪を撫でていた手を、額、頬、唇、首筋と下げていき、寝間着の裾をそっと捲る。
制服を着てしまえば見えない位置にあるその痣に手を滑らせ、口を寄せる。


(似合わないよ、こんなもの。)


お前の肌に色付くものは、僕の付ける赤い華だけで充分だと思う。

肩に、鎖骨に、深いシワが寄っている眉間にキスをして、頬を寄せて。


(いつか必ず、迎えに行くから。)


痛みしか与えないそんな場所からいつかさらって行くと決意した。



だから。



それまで待っていて。







シリウスが包まれているシーツごと抱き締めて。


伝わる熱に心も体も満たされながら眠りに就く。



「愛してるよ、シリウス。」




僕の小さな呟きに、腕の中の温もりが、小さく頷いたような気がした。





END.


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